地方創生の切り札として
コミュニティ主体の再エネ発電を

 そもそもインリージャパンは日本法人の独立性が高く、国内のパートナー企業と提携して、物流インフラや納入後の技術サポート体制を含む日本に根差した商社機能の充実を強みに日本でのシェアを広げてきた。今後はこうした強みを生かし、より地域のエンドユーザーが享受できるメリットを明確にした発電システムの提案に注力するという。キーワードは「電力の地産地消の推進」だ。

インリー・グリーンエナジージャパンの山本譲司代表取締役社長

 「これまでメガソーラーは、売電収入による利回りを第一目的とした収益施設として建設されるケースが大半でした。しかし、それでは設置した事業者が大半の利益を得て、地域が得られるメリットは比較的少なかった。しかもFITで事業者が得る売電収入の原資は、もとはといえば私たちが払う電気料金に上乗せされたものです。これからは、もっと地域や自治体にメリットがある仕組みを考えなければなりません」と山本社長。

 CO2の排出量削減が世界共通の課題であることはいうまでもなく、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトも必然の流れだ。また、地震・核廃棄物処理問題などの不安を抱える原発に対しても、安全でクリーンな再生可能エネルギーは圧倒的に優位だ。それを少しでも推進するためには、地域に密着した小さい発電所をいかに増やすかがカギになる。再生可能エネルギーは太陽光にせよ、風力にせよ、バイオマスにせよ日本が保有する立派な資源であり、日本に資源がないというのは大きな誤解である。地域に潜在する資源をエネルギーに変え、有効活用する発電設備があれば、長期的にみればその収益により地域が潤い、雇用などの経済効果が見込める。つまり“地方創生”の起爆剤になる可能性を秘めているのだ。

 既にインリーでは、自治体や教育機関、森林組合、漁業組合などの地域の小規模コミュニティにアプローチし、電力の地産地消の拠点となる発電所づくりをサポートする活動を計画しているという。設置コストが飛躍的に下がったことにより、20年間のFITを活用しその後は自家消費というかたち、あるいは初めから自家消費というかたちで投資しても20年から30年のスパンで捉えれば、10年程度で投資を回収した後に十分な収益を生み、地域社会に還元することができる。また、各コミュニティがエネルギー自給率を上げれば、電力会社からの買電量を減らすことができるうえに非常用電源としての機能も果たせる。こういった地域を着実に増やしていくことが、日本の再生可能エネルギーの普及を促進するのみならずコミュニティの収入を増やすことに繋がる。「なぜモジュールメーカーがそこまで、と思われるかもしれませんが、そうした本質的な活動こそが我々の付加価値であると考えているのです。つまり今ある資源を有効活用することにより、循環型社会への転換と経済効果が両立できるという事実を実証し普及を進めることこそが、同様に社会貢献とマーケット拡大を両立させることに繋がると考えています」と山本社長は力を込める。

 既存の発電所のような大規模発電所は、電気を作る場所と使う場所が遠く離れているため送電ロスが大きく災害発生時の波及リスクも高いが、再生可能エネルギーなら、使う場所の近くで使う分だけ作ることができる。人口が密集した都会では需要の全てをまかなうのは難しいが、人口密度の低い地方なら小さな単位で自給自足することは十分可能だ。こうした取り組みが循環型社会づくりに着実につながっていく。