ボトムアップ方式で
低炭素社会を築く

「地球温暖化対策には二つのアプローチがあり、一つが今回のようにまず目標を掲げ、実現に向けた方法を模索するトップダウン方式です。これは対象が簡単なものなら効果的ですが、温室効果ガス25%削減のように複雑な場合、方法がなかなか見つからず、非常に難しいことになる。二つ目が、できることは何かと考え、フィージビリティ(実現可能性)を積み重ねていくボトムアップ方式。日本はこの先、ボトムアップしかないと、私は考えています」(茅氏)

 どうやって「できること」を積み重ねていくか。話題のスマートグリッドを例にとりながら、イメージを語ってもらった。電力の需要と供給を調整するスマートグリッドの技術開発自体は、70年代後半から日・米・欧でそれぞれ進められてきたが、注目されるようになったのはIT技術が発達したごく近年だ。

茅陽一氏

「スマートグリッドは温暖化対策に向けた最も重要な技術の一つです。現在、宮古島で小さな範囲の実験が進んでいますが、もっと積極的に全国に広げていかねばなりません。現在のスマートグリッドは電気の需給バランスを図るだけですが、将来的にはセンサーだけでなく、コントロールする機器まで開発していく必要があります」(茅氏)

 最も有効なエネルギーの使い方に向け、給湯器の温度を自動調整したり、エアコンのオンオフを管理する機能まで盛り込んでいく。そのためにはさまざまなデバイスを組み込み、制御技術を駆使するなど、“ものづくり日本”が持つあらゆる技術が必要となってくるだろう。

 このように社会の多様なシーンに温暖化対策技術が生かされ、広まっていくなかで、どんな企業でも、二つのプロセスで温暖化防止に貢献できると茅氏は強調する。一つは自社の商品を作る段階での省エネ・省CO2。もう一つは商品提供を通じた改善プロセスだ。ボトムアップ方式の推進には、後者のプロセスがより重要になってくる。

「近年は持続可能経済への意識の高まりから、CSRが重視されています。商品を通じたCSRを意識する企業が増えたのは、大変すばらしいことです。自分たちが社会に対し、いかに貢献できるかと考えることで、温暖化対策は加速するでしょう」(茅氏)