着々と進む
温暖化対策技術研究

  茅氏が率いる地球環境産業技術研究機構(RITE)は、温暖化問題に対する対策技術の基礎的研究を行う機関で、いくつもの研究を同時に進めている。

「現在、進めている研究のうち大きなものとして、一つはCCS(CO2の回収・貯留)があります。発電所や製鉄工場から出る大量のCO2を、集めて地中深く埋めるもので、その回収における効率のいい吸収剤を探究しています」(茅氏)

 日本のCO2排出内訳を見ると最大発生場所は発電所となっており、それに鉄鋼関連を足すと総CO2排出の半分を超える。CCSはこれら大量発生現場で噴出するCO2を含んだ排煙に対し、上から吸収剤を落としてCO2をとらえ、運んで地中や海底の空洞に捨てる技術だ。

「いったん集めたCO2を取り出すときに熱で温める必要があるのですが、その際のエネルギー消費が全CCSコストの半分以上とバカになりません。いかにエネルギー使用を抑えコストを安くするかという研究を行っています」(茅氏)

 同様のプロジェクトは世界各国で進められており、大きな成果を上げることが期待されている。RITEではCO2回収に膜技術を応用する研究も進めており、こちらも期待が大きい。

「もう一つ、バイオマスを使って、燃料用エタノールを作る研究も進めています。バイオエタノールは、米国ではトウモロコシを原料に、ブラジルではサトウキビを原料に作っていますが、食糧や飼料になるものを燃料にするのは望ましくない。われわれはワラなど農産物の廃棄する部分を使ってエタノールを作れないかと研究しています」(茅氏)

 すでにバイオマスの燃料化は実践段階に入ってきており、将来的に電気自動車やプラグインハイブリッド車が主流になるまでのあいだの、自動車燃料における“つなぎ技術”として期待を集めている。

 こうした基礎的研究が成果を上げ、技術が広く民間に伝播していくにつれて、温暖化対策も次のステージへと移行していく。多くの企業が、低炭素社会を意識しつつビジネスチャンスをつかんでいくことで、確実に世の中は変わっていきそうだ。 

週刊ダイヤモンド」12月25日・1月1日合併号も併せてご参照ください
この特集の情報は2010年12月20日現在のものです