率直に言って、とにかく「人材育成、部下育成は面倒くさい」ものです。研修講師として多くの人材育成に携わってきた身としても、一企業の社長として部下を持つ身としても、強く感じることです。1回言ったくらいでは人はまず変わりません。毎日、何年も繰り返し伝えていくくらいの、本気と根気と覚悟が必要です。本腰を入れて「よし!やるぞ!」という気合を入れなければまともに育成することはできません。

 多くの管理者は、本腰を入れる前に目の前の業務に追われて忙殺されてしまっているようにも見えます。あるいは、自分の仕事でイライラしてしまい、たまたま目についた部下を怒鳴りつけただけなのに、「指導した」と勘違いしている人もいるかもしれません。

 「今すぐ育成に力を入れなくても、自分がちょっと契約をとってくれば今月の目標は何とか達成できる。今月はどうにか乗り切れる」。そうして部下育成が後手後手に回ってしまってはいないでしょうか。

100年後を考えたとき
必要なのは「人を育てる」こと

 管理職の仕事は「今月の目標を達成すること」だけではありません。企業の10年後、30年後、100年後を考えた仕事をする必要があり、そのために会社から部門と人材を預かっているのです。

 特に日本ではトッププレイヤーがリーダーとして選ばれることが多いですが、リーダーとなった以上はいつまでも自分がトッププレイヤーではいけないのです。1人で1億円売るリーダーよりも、2000万円売る部下を5人育てられるリーダーがいたほうが会社の未来は明るいはずです。

 これまでトッププレイヤーであったが故に、部下が自分より売上を上げるということに耐えられない上司もいます。すでに管理者となり役割が変わっていることを忘れ、「部下が自分より売るようになってしまったら、自分の評価が下がるのではないか」と勘違いをしてしまい、肩書きという権力を使って部下を押さえつけるような行為に走ってしまう人もゼロではないのです。

 また悪意はなくとも「自分が現場を離れたら、きっと部門売上が落ちてしまう」という恐怖にかられ、なかなかプレイヤーをやめられない人も少なくないでしょう。部下に任せる、というのはとても勇気のいることです。自分がやればできるけれど、部下には荷が重いかもしれない。それに部下が失敗すれば責任は自分が負うことになる…。

 「一年先を思う人は花を育てなさい。十年先を思う人は木を育てなさい。百年先を思う人は人を育てなさい。」これは中国の菅子に出てくるとされる言葉です。

 現在プレイヤーとしてトップを走りながら、マネージャーとして管理業務も行っている方には、「自分がいなくなった後も、部門が、そして会社が永続的に繁栄するためには何をすべきなのか」を一度ゆっくりと考える時間を持っていただきたいと思います。

次のページ

現場も見ずに指導したつもりになってはいないだろうか

TOP