夕方になると目がしょぼしょぼして、見たいものにピントが合いにくくなる。このような見えにくさをしばしば感じる人には、「スマホ老眼」が疑われる。老眼といえば40代後半から増えてくる症状であるため、“まさか自分はまだ…”と思う人もいるだろう。しかし近年、20代や30代など老眼にはまだ早い世代に、スマホの使い過ぎによる目の不調を訴えるケースが増えているのだ。

忙しいビジネスパーソンほどなりやすい「スマホ老眼」

 最近よく耳にする「スマホ老眼」。40代後半から増える「老眼」と違うのは、若年層でもデビューしてしまう点。代表的な症状には、以下のようなものが挙げられる。

 とくにビジネスパーソンは、スマホ老眼に悩まされるリスクが高いという。というのも、仕事中はパソコンのディスプレイを見続けていることに加え、朝の通勤電車ではスマホでニュースサイトやSNSをチェックし、ランチの後はゲームアプリで息抜き。帰りの電車では読みたかった本を電子書籍で楽しむ。他にも、スマホを使って出先でメールをチェックしたり、取引き先までの経路を調べたりなど、忙しいビジネスパーソンほど目の休まる暇がない。

あまきクリニック  味木幸 院長

 現代人の目についてに詳しい、あまきクリニックの味木幸院長はこう指摘する。

 「パソコンが普及し始めた頃から、長時間パソコンのディスプレイを見続けることで目の不快な症状や頭痛・肩こりなどが起こるVDT(Visual Display Terminal)症候群が注目されてきました。そして今、スマホが持つ特性は、パソコン以上に目を酷使することが分かっています」

 例えば、スマホはパソコンよりも目と画面の距離が近く、ピント調節機能が酷使される。加えて、画面が小さいため、眼球をほとんど動かすことなく見続けることになる。至近距離から目に当たる、ブルーライトの影響も問題だ。

 「そもそも老眼とは、レンズの役割を果たす水晶体の弾力が、老化によって失われることで起こります。一方、スマホ老眼では長時間にわたり目を酷使することで、水晶体の厚さを調整する毛様体筋が疲労し、調節緊張という状態が起こることでピントが合わなくなります。どちらもピント調節機能の不全が原因であり、スマホの長時間使用で起こるスマホ老眼を、私は“仮性老眼”と呼んでいます」(味木院長)

 老化が原因で起こる老眼は、誰にでも起こるもの。しかし、スマホ老眼による調節緊張が続けば、40代前でも“見えにくさ”が起こり、ピント調節機能不全に拍車がかかる。老眼鏡の出番が早まるのは避けたいところだ。そのためにも早急に目の疲れを取り、予防するための工夫を実行することが大切だ。