人件費や人員構成など「ヒト」に関する現状に多くの経営者が危機感を持っている。人事改革を進めるうえでまず必要なのは、「人事の見える化」だろう。現状を数値で定量的に把握することが、議論のベースになるはずだ。そんなニーズに応えるのが、リクルートキャリアコンサルティングが提供する「AR Basic 10」である。

 リーマンショック後、多くの企業がコスト構造の見直しを進めてきた。しかし、なかなか手をつけられないのが、人件費や従業員数、人員構成など「ヒト」にかかわる分野である。

松田武久 リクルートキャリアコンサルティング
執行役員 人材総合営業本部本部長

「その企業にとって、現状が適切なのかどうか。適切な水準と比べて、『人件費が高過ぎる』という場合もあれば、逆に『もっと高くすべき』というケースもあるでしょう。従来多くの企業において、『中高年層が多い』とか『同業他社より給料が高い』といった定性的な議論は行われていたと思います。ただ、定量的な数値が不十分なために、議論をそれ以上前進させることが難しかったのが実情ではないでしょうか」

 こう語るのは、リクルートキャリアコンサルティングで執行役員を務める人材総合営業本部の松田武久・本部長だ。

 

客観的な数値を示して
人事を見える化する

 数値的な裏づけや客観的な指標が不十分だと、経営陣が意識を共有することは難しい。たとえば、危機感を持っている人事部長が人事制度改革を進言したとしても、経営者が「ウチは大丈夫」と思っていれば、その提案が受け入れられることはないだろう。

 「改革が必要かどうかはともかく、すべての企業にとって『人事の見える化』は重要です。まずは、数値で現状を把握すべきではないでしょうか」と松田本部長は提言する。

 このような問題意識を基に、同社は昨年11月に提携パートナーであるトランストラクチャの人事アナリシスレポートの再編・改修に協力し、「AR Basic 10」をリリースした(図1)。定量分析と施策を提示することで、顧客企業における問題点の特定と施策の検討をサポートするサービスである。

図1 AR Basic 10のサービス範囲 企業から必要なデータの提供を受け、それを分析したうえで改善施策を提示する。専門家の視点から、「どこに問題があるのか」「何から手をつけるべきか」「どのような施策を、いつ頃までに実施すべきか」といった提言がなされる。企業はデータを提供するだけなので、人事・経理以外の部門の手を煩わせることはない

 

高柳公一 トランストラクチャ
取締役 シニアパートナー

 トランストラクチャ取締役シニアパートナーの高柳公一氏はこう説明する。

「人事は、もともと曖昧性が高いといわれている領域。経理や財務の分野では、ROEやROIといった一般に比較できうる指標がありますが、人事では、そうした客観的な指標による現状の把握が十分に行われていません。このような状況のなかで、正しい人事上の意思決定をすることは難しいと思います。AR Basic 10では、人事の状況を客観的に診断し、専門的な見地からの提案を行うことで、お客様が次のステップに進むことを支援しています」