欧米で開発されたBTM(ビジネストラベルマネジメント)。出張業務の予約・購入プロセスをアウトソーシングする仕組みで、国内でも徐々に浸透し始めている。航空券や宿泊費などの直接コスト削減のほか、システム導入で後方の事務業務が減るなど間接コストの削減も大きい。BTM導入のメリットを流通科学大学の高橋一夫教授に聞いた。
「BTMというのは、企業と包括契約を結んで、出張業務の予約、購買プロセスをマネジメントする仕組み。ひと言でいえば、出張経費を削減し可視化するサービスです」
BTM事情に詳しい流通科学大学の高橋一夫教授はそう説明する。BTM導入で削減できるのは、まず直接コストと呼ばれる航空券や宿泊費など出張旅費。BTM事業を行う会社は、航空会社やホテルチェーンなど、サプライヤーとの交渉を優位に行い、チケットや商品を一括購入することで、割安な企業契約レートを獲得する。出張のボリュームにもよるが、それだけで年間で十数%の削減が可能になる。
出張手配業務の
人的削減が可能
それとともに重要なのが、間接コストと呼ばれる後方事務部門の人件費や時間の削減である。
「出張に行くとき、出張者は通常、交通費や宿泊費、日当などの概算費用を上司や管理部署に申請。承認を受けると交通機関のチケットや宿泊等を手配、現地で必要な小口現金を仮払いで受け取ります。旅行会社からチケットを受け取って出張に行き、出張から戻ると、領収書を整理して費用を精算、そこで再び審査と承認があります。出張者にとっても面倒な作業ですが、これにかかる庶務や経理などの人的資源と時間は膨大なものになります(下図表参照)。
BTMのメリットは、システムを導入することで、出張者本人の出張業務の煩雑さが軽減され、企業にとっても後方事務部門の人件費を大幅に削減できる点にあります。私が知っている例では、日本各地の支店に数十人いた手配担当者が、BTM導入後は本社に数人いればよいということになった。人件費など間接コストの削減を含めるとBTMのコスト削減効果は非常に大きなものになるのです」
最新のトラベル
テクノロジーの導入
BTMで欠かせないのが、最新のトラベルテクノロジー。BTM各社は、出張フロー全体をシステム化し、オンラインですべてが完結できるシステムを導入している。
「BTMのシステムの基本は、パソコンでのセルフブッキングが可能になっていること。BTMのシステムには通常、出張者のプロファイルデータが登録されているため、たとえばいつも禁煙席、通路側の席を取っている人は、次に予約するときは自動的にそうした席がブッキングされる。また禁煙希望という情報はホテルの手配にも適用されるため、頼み忘れて喫煙の部屋になって不快な思いをすることもなくなるのです」
出張者にとっては、手続きの煩雑さがなくなることに加え、スムーズでストレスのないビジネストラベルが可能になるのだ。
出張手配フローがシステム化し、可視化されることで、出張規定の管理もたやすく行えるようになる。そもそも業務渡航における出張規定が遵守されていないケースがあとを絶たないため、企業は膨大なコストをかけているという。可視化されることで、規定どおりの業務渡航が行われ、社員が勝手に別のホテルを予約することもなくなり、結果的にサプライヤーとの交渉も有利に進められることになる。