「日本の企業の場合、販売店の営業を早く辞めて本部に行くのがビジネスマンの出世コースだったりしますよね。でも本部に行ったとたん、お客のほうを見なくなってしまうでしょう。会社は、現場でお客にサービスをしている人たちの待遇をもっと改善して、フランチャイズのオーナーで一生食べていけるような環境をつくってもいいんじゃないでしょうか。上司にしても、『かわいがってやるから、客じゃなくて俺を見ろ』というボス的なタイプの人がまだまだ多い。お客を見ることがサービスの本質だとわかっていないんです」(野地氏)

自分にしかできない
サービスを心がける

 野地氏は、東京オリンピックを裏で支えた人びとを取材した経験から、このようにも語る。

「高度成長時代、モノはなかったけれど、誰もが明日は今日よりよくなるという思いをもって生きていた。これからの日本では、未来へのときめきを感じさせるようなものに触れながら、明るく元気いっぱいに仕事をするのもサービスにつながるのかもしれません。周りに同調して自粛したり、なにもしないまま客が来ないとぼやいているだけでなく、自分にしかできないサービスを考えてみては」

 冒頭でも触れたように、中身や値段が同じなら、そこに求められるのは、ほかのなににも似ていない唯一無二のサービス。一人ひとりがさらに想像力を働かせれば、サービスの新しい地平が拓かれるかもしれない。お客の声こそサービスの重要な源であり、それを享受できるかもまた、お客次第なのである。