“鉄のまち”から“ロボットのまち”へ。北九州市では今、市場の成長が期待されるロボット産業の支援に力を入れている。もともと“モノづくりのまち”であり、市内には産業用ロボットで世界ナンバーワン企業を擁し、ロボット開発に携わる学術研究機関も多い。合言葉は「ロボットと共存するまち・北九州」だ。

安川電機のロボット工場。主に自動車業界に向けた産業用ロボットを製造している。国内の生産能力は2200台/月に達する。同社では今、敷地内に市民のための情報発信エリアも計画中で、事業所全体を「ロボット村」にする構想を進めている

 北九州市八幡西区黒崎。新設された広大なロボット製造工場には、完成し出荷を控えた、真新しい産業用ロボットが、所狭しと並んでいた。「これらの中・大型ロボットはアジア向けが中心で、今は製造が間に合わない状態」と説明するのは、安川電機ロボット事業部事業企画部の前川昭一部長だ。

産業用ロボット
世界一の企業が立地

安川電機
ロボット事業部事業企画部
前川昭一 部長

 同社は1977年に日本で初めて全電気式産業用ロボット「MOTOMAN」を開発。以来グローバルに事業を展開し、産業用ロボットの出荷台数で世界一を誇る。来年の創立100周年に向け、ロボット工場を新設、分散していた生産拠点を集約し、ここ北九州市の製造工場を世界のマザー工場として生産体制を敷く。

 「われわれはモノづくりのメーカーですから製造業のパートナーとなり得る企業が、工業都市・北九州に多いのが魅力です。当然アジア市場へのロケーションにも優れているという点も大きいと考えています」(前川部長)

 安川電機は創業時からモーターの制御技術に強みを持ち、かつて受注の多くは鉄鋼業だった。だが産業構造の変化を捉えて、産業用ロボットに軸足を移し、世界的企業に上り詰めた。その意味では、“鉄のまち”の技術が生んだ、新産業というべきかもしれない。