介護・福祉分野での
ロボット開発が進む
機器水栓事業部
機器水栓生産設計部
堀内啓史 主任技師
北九州市は昨年策定した「新成長戦略」の中で、「ロボット産業拠点の形成」をリーディングプロジェクトの一つに置いた。もとより産学官が連携して「北九州ロボットフォーラム」を設立するなど、ロボット産業の振興には力を入れてきた。
今、北九州市が注力しているのは、民生用ロボットの開発・導入支援だ。同市は政令指定都市の中で高齢化率がトップという現実があり、特に介護や福祉分野でのロボットが期待されている。が、実現するには多くの課題も残されている。例えば民生用ロボットは、産業用ロボットに比べてオーダーメード的なロボットが多く量産化がしにくい、また実証実験の場を探すのが難しい、機器開発コストやロボット導入コストの負担が大きいこともネックになっている。
そんな中、これまで北九州市が支援を行った事例の中には、やはり市内に本社を置くTOTOの「ベッドサイド水洗トイレ」がある。これはベッド脇に後付けできる水洗トイレで、パルセータという波状の板を用いて汚物を粉砕、細い排水ホースで圧送するため、床や壁に大きな穴を開けることなく、必要に応じて移動できる特徴がある。「市からは開発コストの助成の他、実証実験を行う施設を紹介していただいた。高齢化率が高い北九州市から、介護ロボットを送り出すことに意義があると感じている」と、TOTO機器水栓事業部の堀内啓史主任技師は語る。
また同市内のリーフという会社は、市の紹介で九州栄養福祉大学や介護老人保健施設などの協力を得て、「歩行リハビリ支援ロボット」を開発。現在実証実験中だが、完成すれば介助者の負担が軽減され、効率の良い訓練ができると期待されている。
ロボット産業クラスターの
形成を目指す
北九州市ではこの他、市内の理工系3大学による「カーロボ連携大学院」を開設、ロボットや自動車産業に携わる実践的な高度専門人材を育成する取り組みが始まっている。また生産性向上に意欲的な中小企業のため、行政としては全国で初めて「産業用ロボット導入支援センター」を創設、初期投資の負担を軽減する補助金制度もスタートした。
他にも、中小企業向け製造ロボットをオール北九州で開発する「市内発ロボット創生事業」や、学生主体のモノづくりプロジェクトを支援する「ひびきのハイテクチャレンジ(人材育成)」など、ロボット産業振興に関する取り組みは数多く、同市がロボット産業に懸ける本気度と情熱が伝わってくる。
経済産業省・NEDOの「ロボット産業将来市場予測」によれば、ロボット産業の国内市場は2020年に2.9兆円規模に拡大すると予測されている。
北九州市が目指すのは、ロボット産業クラスターが形成された「ロボットと共存するまち・北九州」。モノづくりの力は、先端成長産業であるロボットの分野で、新たな力を蓄えている。