今年1月、北九州市にある旧官営八幡製鐵所関連施設を含む産業遺産群が、ユネスコの世界文化遺産登録に向けて正式に推薦された。登録が決定すれば、北九州の名が国内外を駆けめぐるのは必至。同市では新しいスタジアムの建設計画もあり、中心市街地の活気を取り戻す“リノベーションまちづくり”もスタート。北九州市の新成長戦略への挑戦を届ける連載の4回目は、にぎわいによる集客交流産業の施策を見る。
官営八幡製鐵所が操業を開始したのは1901年。以来、北九州工業地帯の基幹工場として日本の近代化を支え、重工業化の道を切り開いてきた。モノづくり大国日本の礎を築いたと言っても過言ではない。その旧官営八幡製鐵所の四つの関連施設が、8県11市に分布する産業遺産群に加わり、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」として、ユネスコの世界文化遺産に正式に推薦された。
現役で稼働中の施設も
世界遺産の対象に
四つの関連施設とは、まず同製鐵所の創業2年前に建設された、日本と西洋の建築様式を併せ持った「旧本事務所」。二つ目・三つ目はドイツの製鉄会社グーテホフヌンクスヒュッテ社の設計、鋼材加工、仮組み立てを行った後、国内で1900年に建設された「修繕工場」と「旧鍛冶工場」。そして四つ目は、1910年建設の「遠賀川水源地ポンプ室※」である。このうち「修繕工場」と「遠賀川水源地ポンプ室」は、100年以上たった現在もなお現役で稼働しており、稼働中の資産が世界文化遺産に登録されると、日本初の快挙となる。
「世界遺産への登録は、北九州地域にとって郷土の歴史を誇れる出来事になる。そして国内外での知名度も向上し、新成長戦略にもある“にぎわいの創出”に貢献できる」と市の世界遺産登録推進室は意気込む。現地調査を含む審査を経て登録の可否が決定されるのは、2015年の夏頃だ。
※ 「遠賀川水源地ポンプ室」所在地は福岡県中間市