1万5000人収容の
“エコ”スタジアムを建設
一方、現在北九州市の大規模な建設プロジェクトとして計画されているのが、1万5000人収容のスタジアム。JR小倉駅新幹線口から徒歩7分という好立地に建設し、サッカーJ2リーグの「ギラヴァンツ北九州」のホームスタジアムになる予定だ。もちろんJリーグの試合のみならず、小中高生のサッカー・ラグビー大会の他、子どもたちへの芝生開放、コンサートやイベントの会場として利用される予定で、“まちのにぎわい”を生み出す大きな武器となる。また、環境未来都市にふさわしい“エコ”スタジアムとなり、太陽光パネルなど再生可能エネルギーの最大限の活用・導入を計画。環境技術のシンボルとしても一役買う。
「小倉家守(やもり)構想」による
まちなか再生事業
街のにぎわいづくり&中心市街地の活性化も進んでいる。市のサービス産業政策課が取り組む「リノベーションまちづくり推進事業」がそれだ。
小倉市街地では、リーマンショック以降、事業所の閉鎖や統合の動きが加速、オフィスビルの平均空室率は20%近くに迫り、就業人口も減少した。そこで企画されたのが、「小倉家守構想」の策定である。
家守とは、江戸時代の長屋の大家の呼称で、住人の面倒や地区のマネジャーのような存在。その家守の手法を、現代に取り入れたのだ。
具体的には、市が産学官連携任意団体の「北九州リノベーションまちづくり推進協議会」に委託して“リノベーションスクール”を開催。全国から集まった受講生が、名だたる講師陣の指導を受けながら、地元の遊休物件オーナーに、多彩なリノベーション事業計画を提案するというものだ。
その結果、小倉の商業地区の遊休物件が、若手デザイナーやクリエーターのためのインキュベート(起業家支援)施設や雑貨店に生まれ変わったのを皮切りに、魅力的なリノベーション物件が次々に誕生した。同スクールは現在まで計6回開催され、ストリートやエリア全体をリノベーションする計画を含め、約30の事業計画が提案された。
「リノベーションまちづくりがスタートして以来、新規の事業者・雇用者数が順調に増加、商店街の通行量も緩やかではあるがV字回復している」と市のサ
ービス産業政策課は成果を語る。
路線価格が最大で約9分の1まで落ち込んだという市の中心市街地の小倉。その街で実践される「小倉家守構想」は、これまでも市が直面してきた数々の“危機を進歩に”転化させる方策の一つとして大いに注目されている。
from 記者手帳
優秀な留学生らの雇用を
生み出せるか?
北九州市の産学官連携の拠点ともなっている「北九州学術研究都市」には、北九州市立大学、九州工業大学、早稲田大学、福岡大学の1学部4大学院の他、16の研究機関と48の企業が集積している。その特色は、アジアからの留学生や研究生が多いこと。学生数は現在約2200人で、そのうち留学生は約500人を数える。研究都市内の"学食"で昼食を取ると、周囲から聞こえてくるのは中国語をはじめとする外国語だ。FAISの企画広報課によると、地域の小学校には外国人の子弟が増え、運動会などはグローバル色が濃いという。しかし海外からの優秀な頭脳集団は、北九州市外の日系企業へ就職したり母国に戻ってしまい、市内になかなかとどまらない。せっかく学ぶ環境は提供しても、受け皿が不足しているのだ。国際交流から新しいビジネスが生まれることは多い。彼らを引き止める魅力ある雇用を生み出せれば、学術研究都市の機能はさらに充実するはずだ。(K)