「プレゼンテーション」はビジネスパーソン必修の基本スキルだ。プレゼンの巧拙が事業スピードの向上、ひいては業績アップのカギを握る。そこで必要となるのが、短時間に提案内容をわかりやすく伝える資料作成術、さらにはツールをうまく活用してプレゼンをコントロールし、相手の信頼を得るテクニックだ。ソフトバンクなどで培ったプレゼン術を公開した『社内・社外プレゼンの資料作成術』の著者、前田鎌利さんに、勝ち残るプレゼンの極意を聞いた。
なぜ今、「プレゼン」が重要なのか
今の時代、新規事業へのチャレンジなしに企業の成長はあり得ない。年々速度を増すかのような変化のスピードについていけなければ衰退するのは明らかだろう。そうならないために必要なのが、素早い意思決定による事業スピードの最大化だ。これは業種・業態問わず、企業が生き残るうえで極めて重要な課題となっている。
意思決定をする経営層は、会議などで出されるいくつもの案件に対し、次々と判断を下さなければならない。のんびり考えている時間などない。だからこそ、短時間で提案内容をわかりやすく伝え、決裁者を納得させる「プレゼン」がより重要になっている。ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)時代、前田さんが孫正義社長から与えられたプレゼン時間はわずか3~5分。ときには急きょ、その場で「1分でやるように」と指示されることもあったという。
現在は独立し、さまざまな企業でプレゼン講師を務める前田さんは次のように話す。
「プレゼンはビジネスパーソン必修の基本スキル。多くの会社が意思決定スピードを上げるために、社員のプレゼン・スキルの向上に強い意欲を持っています。というのも、それが会社の事業スピードの向上、ひいては業績アップにつながるからです。どんなに素晴らしい企画や提案も、経営層からゴーサインを得なければ一歩も前には進みません」
実際、プレゼンいかんでビジネスのスピードはどのくらい変わるのだろうか。前田さんによると、ソフトバンクグループの企業でプレゼン・スキルを高める取り組みを行なったところ、決裁スピードが1.5~2倍に上がったという。前田さんが講師を務める企業でも同様の成果が出ている。
ビジネスのスピードアップには「社内プレゼン」だけでなく、「社外プレゼン」も重要になる。どんなに魅力的な商品やサービスを開発しても、クライアントにその魅力を伝えられなければ業績アップにはつながらない。
さらに、「クライアントとのコミュニケーションを通して、自社の商品・サービスや事業内容などについて改革・改善すべきことに気づいた時には、再び社内プレゼンでそれを適切にフィードバックしていくことも大切。この循環がうまくいくかどうかが企業の成長に大きく影響します」とも。つまり、対社内・社外両方のプレゼン・スキルを磨き、2つを上手に回していくことが求められているのだ。