その際、「どこまで費用をかけるか」は悩ましいテーマだ。

「対策は自社のコストですが、そのメリットは自社だけでなく取引先や社会全体に及ぶ場合があります。その企業から見れば、メリット以上のコストを負担する感覚になりますが、長期的に見れば経済合理性にかなう効果があります」と大林氏は言う。

 短期的には過大なコストと見えても、「供給責任を果たす会社だ」という評判が高まれば取引先も増えるだろう。社会的な評価は、人材の採用など多方面に影響する。

風評リスクとITのリスクをどう考えるか?

 今回は、農水産物などの風評リスクも注目された。真偽入り交じった風評に、いかに対応すべきか。大林氏はこう説明する。

「信用できる情報があれば、風評は起きません。問題は、不確実な時点でいかに情報を提示するか。早く発信して間違いは後で訂正する。それが危機管理のプロ同士のやり方ですが、一般的には非常に難しい問題。私はケース・バイ・ケースで判断せざるをえないと考えています」

 ITに関するリスクも注目された。業務にかかわるデータを消失した市役所や病院などは少なくない。こうしたリスクを避けるために、クラウドコンピューティングが関心を集めている。

「クラウドサービスもさまざま。信頼性やセキュリティなどを評価して、自社に合ったものを選ぶべきでしょう」(大林氏)

 ITを強化していく過程で、情報漏えいやサイバー攻撃など、新たなリスクにも注視しなければならない。ビジネスは複雑化、高度化しており、企業には日常的にリスクをチェックし、その対策を見直す姿勢が求められる。コスト高かもしれないが、大林氏の言うように、長期的には報われる努力である。