46歳で立川志らくに入門し、医師から落語家に転身するという異例の経歴を持つ、立川らく朝師匠。医学や健康にまつわる知識を盛り込んだ「健康落語」を通じて、世の中を啓蒙する立川らく朝師匠に、健康落語の誕生秘話や新作を作る際の苦労、またレギュラー番組である「Dr.らく朝 笑いの診察室」の舞台裏などを聞きました。

健康落語の創作過程は
湿気たねずみ花火のよう?

立川らく朝 落語家・医学博士 笑いと健康学会理事 1954年長野県生まれ。杏林大学医学部卒業後、慶応義塾大学医学部内科学教室へ入局。主として脂質異常症の臨床と研究に従事。慶応健康相談センター(人間ドック)医長を勤める。2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、2015年10月真打昇進。健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」「健康落語」など新ジャンルを開拓。毎週月曜20時54分からBS日テレで「Dr.らく朝 笑いの診察室」が好評放送中。

――師匠が医師経験を活かして作った、まったく新しいジャンルの落語「健康落語」について教えてください。

らく朝 ひとことで言うと、落語で健康を語るものです。病気の周辺には人々の喜怒哀楽やドラマが必ずあります。それを描きながら病気をあぶり出し、病気や健康にまつわるメッセージを伝えたいと思っています。幸いお客さんの反応が上々でいつも大変喜んでいただいています。現在レパートリーは70~80ほどあります。

――「健康落語」はどのように創作するのですか?

らく朝 まず、テーマがなければメッセージをこめられません。テーマを先に決め、こういうメッセージをこめる、というところから作り始めます。この病気ならこういうメッセージ。ならばどういう人がその病気になったら話が面白くなるか、と考えて、キャラクターを作ります。そしてその登場人物を動かしながらこうすれば面白いか、ああすれば面白いかと試行錯誤するのです。最初に起承転結の構成を決めるのではなく、頭から順に、実際に話を進めるように作って行きます。そうしないと話が動かないのです。

――行き詰まることもありそうですね。

らく朝 しょっちゅうですよ。毎回作っている途中で必ず1、2回は壁にぶち当たります。どうやっても話が先に進まない。もう思考停止です。そうなったら寝ます(笑)。それで同じところから考え始めると、先がふっと見えることもあるし、どうにもならなければボツです。ちょうど湿気たねずみ花火みたいなものでね。火を付けて、下からちょろちょろ火花がのぼっていって、湿気ているので、時々火が消えかけて止まる。かと思えばまたつながって、おしまいまでたどり着く。そんなようなものですね。