大学全入時代を迎え、受験生側の大学選びの基準が変わりつつある。偏差値だけで決めるのではなく、その大学らしい特色、つまりブランドに注目し始めているのだ。こうしたニーズに対し各大学も、ユニークなカリキュラムで全人格的な成長をサポートしたり、就職支援をより積極化するなど、多様な取り組みで応えている。

 大学入試事情に詳しい和田秀樹氏は、「大学のブランド力を論じるときには、二つの視点があると思います」と、切り出した。

 その一つは、「知名度から来る信頼感や安心感です」。特に伝統校では、昔から変わらないイメージがある。「○○大学の出身だから、どことなく上品なんだとか、バリバリと突破力があるのは△△大学出身だからだね、などといったことがよく言われますよね」。大学自身も、こうしたブランドイメージを守ろうという意識が強い。「いわゆる偏差値に代表される入学に必要とされる学力レベルの順位が、長年、ほとんど変わらないことからも、大学のブランドイメージの根強さがわかります」と、和田氏は分析する。

国際社会で通用する人材を育成

精神科医 和田秀樹氏
東京大学医学部卒業。老年精神医学などを専門とする傍ら、大学受験、心理学、教育問題などの分野で、マスメディアなどを通じて多方面に発信する。『学力崩壊』『受験は要領』(共にPHP研究所)など著書多数。

 とはいえ、「かつての序列が通用しなくなるケースが出てきました」。そこで注目されるのが二つ目の視点、卒業することで、どれだけ付加価値が高まるのかだという。それが端的に表れるのが、卒業生の就職状況だ。「大学生の就職状況が厳しさを増すなかで、就職率の高い大学ほど社会から評価されているという認識が広がることになりました」。大学のブランド力の大きな部分を、就職状況が占めるようになったというわけだ。

 そんななかで、各大学はこれまでにないさまざまな取り組みに力を入れている。就職をサポートするためのキャリアセンターの充実や資格取得支援などの施策が進んで久しいが、国際社会に通用する人材を育成する動きも目立つ。和田氏によると、「外国人からは、語学力のみならず、教養が高く評価されます。また、国際性を身につけるには、自分の国である日本に対する深い理解と、自分で考えて語れる発信力が必要。哲学や歴史といった教養の習得も必須では」とのこと。幅広い知識とともに、どんな場にあってももの怖じせず、相手の理解を得られるようなコミュニケーションの力を養う場が必要だというのだ。