残念ながら高校教育までは、このような素養を育む機会には恵まれないことが多い。「大学の4年間が、最初で最後のチャンス」になる。「重要なのは、異なる意見を交えることのできる闊達な雰囲気だと思います」。学部の枠を超えたカリキュラムや、多様性を受容するカルチャーが、これからの大学のブランド力を高めると期待される。

厳しく追求すべきコストパフォーマンス

 大学を選ぶ側である保護者や受験生の姿勢も変化している。「従来、学生たちは『元が取れなければ損をする』といった意識に乏しかった。それが今は、卒業後の進路にまで厳しい目を向けています。保護者ともども、コストパフォーマンスを追求する傾向にあるようです」。実学志向に拍車がかかり、資格取得を目指す学部・学科の人気が高まっている背景にもなっている。

 和田氏は、「やはり就職率は、企業から見て魅力的な人間を育てているかを判断する重要な尺度の一つになります」と語る。国際的に見ても、日本では家計における教育費の負担が大きい。おカネと時間をかけて大学を受験し、入学するのだから、その大学を卒業することでどれくらいの生涯年収を期待できるのか、冷徹に見極める必要があるというのが、和田氏の考えだ。

「そのためには、大学にも一定の厳しさが必要です」。入試科目を減らしたり、進級の要件を緩和するなど、学生優遇の措置を取る大学もあるが、「これでは社会、企業に魅力ある人材を育成することはできません。大学は生き残りをかけて、卒業時の学生の品質を保証する方策を考えていただきたいところです」。入学のルートが多様化した今、大学の学びに必要な知識をあらためて補習するなど、学生のポテンシャルを広げる取り組みが求められるのだ。

 和田氏は「保護者も受験生も、大学選びはシビアに行ってほしい」と、締めくくった。大学で何を得たいのか。自らの目標、将来のビジョンを明確にし、そのうえで、実現をサポートしてくれる大学を選ぶ。さらに、入学後も社会から必要とされる人材になるよう、多面的に勉学に励む覚悟と行動が、卒業時の実りを豊かにしてくれるだろう。

 学生の意識と社会と学生のニーズに応える大学の取り組みが、ブランド力をさらに高めることは間違いない。