「そこには、循環型社会を回していく視点が不可欠です。循環というのは、もともと自然環境が持っている自浄作用と考えていいでしょう。昔から自然と人間を対峙させてきた西洋社会と異なって、日本人は自然のなかに人間を置く価値観を持ってきました。循環型社会への移行は、じつは私たち日本人のアイデンティティに根ざした、自然に帰る取り組みだと言えます」
鳥取から世界へ
ベンチャー企業の挑戦
もう少し具体的に考えてみたい。見山氏はこれまで数多くの環境ビジネスに携わり、その発展を見守ってきた。
「たとえば使用済み紙オムツの燃料化を目指すベンチャー企業があります。ベンチャーは急成長する一時期に資金繰りに詰まると、いわゆるデスバレー(倒(生態系)構築に及ばず、危機に瀕していました。そこで、私は、山陰のある地方銀行を紹介しました」
なぜ東京のベンチャーを、山陰の金融機関に引き合わせたのか。一つには、紙オムツの廃棄物処理という市場性を考えた場合、高齢化率の高い山陰地方はまさに「高齢化先進地」だからである。
また、経済が循環する仕組みをつくるのなら、いきなり大きな舞台で勝負するよりも、地方都市で着実に成功を収め、その影響を順次、広めていくほうが条件が整いやすい。
金融機関との提携話は順調に進み、紙オムツ処理のベンチャーは鳥取・米子に本社を移した。工場を持たないファブレス企業だったので、外注先はすべて地方銀行が紹介し、地域でエコシステムを築いていった。製造拠点を設けた次の策は、燃料を使う企業を探すことだ。こちらも地銀の情報網を生かしている。
「それだけではありません。汚物を含んだ高分子ポリマーを乾燥させ、破砕、滅菌して燃料ペレットにする技術は、世界でもそのベンチャー企業のオリジナル。紙オムツの処理が環境問題化しているのは欧米社会も一緒。世界から米子に注目が集まり、提携のオファーも舞い込んでいます」
ビジネスの連鎖が生まれ始めているなかで、注目したいのは、金融機関が人と人を結ぶ“仲人役”を果たしていることだ。