
社外プレゼンには相手の感情を動かす
ストーリーがないとダメ

前回、このコーナーで紹介した社内プレゼンの資料づくりのポイントは、相手が社内の人なので「シンプル&ロジカルであること」だった。だが、社外プレゼンの場合はこれプラス、「相手の感情に訴えること」が必要だと、前田さんはいう。
「プレゼンの相手は、利害を共有する社内の決裁者とは異なり、こちらのプレゼンを聞く義務はありません。興味を持ってもらわなければ、その時点でアウト。だから、『そうそう、そうなんだよ!』『なるほど!』など感情を刺激する工夫が必要です。ロジックだけでは、社外の人を納得させることはできません。大事なのは、相手の『感情の動き』を意識しながらプレゼン全体のストーリーを組み立てることです」
ストーリーというと難しく思えるが、次の流れを覚えておけばいいそうだ。
(1)共感:「そうそう、それで悩んでいるんだ」と思わせる
(2)信頼:「この人の話は聞く価値がありそうだ」と興味を持たせる
(3)納得:「この人の言うとおりにすれば、たしかに問題は解決しそうだ」と感じさせる
(4)決断:「よし、やってみよう」「商談に入ろう」などと決めさせる
相手がこの4つの感情をたどることをイメージしながら、必要な要素を並べていく。
こうしたストーリーの組み立てや感情に訴えかけるスライドの工夫によって、誰にでも心を動かす資料が作成できるようになるという。前田さんが「社外プレゼンの資料作成術」を確立したのはソフトバンク時代。孫正義社長が社外に向けてプレゼンするときの資料づくりも担当した。
「企業トップのプレゼンですから、重みがハンパありません。孫社長から直々に厳しいご指摘をいただきながら、何度も何度も資料をつくり直したものです。これが非常に勉強になりましたね。ご存知のとおり、孫社長は大変情熱的な人。どうすれば、自分の熱い思いを聴衆の心に届けることができるか。それを徹底的に考え抜く孫社長の姿勢から、多くのことを学ばせてもらいました」
「相手の感情を動かす」――これが前田さんの社外プレゼンの鉄則だ。開始30秒で聞き手の共感を獲得し、3~5分で納得・決断へと導く資料づくりのポイントを見ていく。