失敗の許されない初動措置を
確実に遂行するために

 東日本大震災の直後から、ネットワークオペレーションセンターは被害の拡大を防ぎながら、制約の範囲内でネットワークの機能を維持し続けた。厳しい状況のなかでミッションを果たすことができた理由は、普段からの準備と訓練にあったという。

 ドコモのネットワークオペレーションセンターは東京と大阪の2ヵ所に設置されている。それぞれが東日本と西日本を分担しており、もしも一方が被災した場合には他方がカバーする体制だ。

NTTドコモ
サービス運営部
ネットワーク統制担当
竹内 基晃氏

「今回は東京のセンターの負荷が非常に大きくなったことから、大阪のセンターで一部業務を実施した」とドコモの竹内氏は打ち明ける。こうした東西の連携に加えて、非常時に役立ったのが普段からの訓練である。

「特に災害時の初動措置では、失敗は許されません。そこで、さまざまなかたちで毎月1回以上の訓練を実施しています」とドコモの岡裕之氏は説明する。最も大がかりな訓練は、年に1回行われる全社規模のもの。また、ドコモではこの他にも、指定公共機関として、国・地方自治体などと合同による防災演習にも参加するなど、日頃から災害に備えた訓練を徹底している。

「一定以上の震度が観測された場合、速やかに通信規制を実施する必要があります。そのための端末操作を実行直前の段階まで、手順通りにやってみる。その訓練を毎月しています。また、東西いずれかのネットワークオペレーションセンターの被災を想定して、両センター間でお互いの機能を代替するという訓練もしています」と竹内氏は言う。

 さらに、大規模災害に備えたマニュアルの存在も大きい。今回の大震災では、このマニュアルに沿った対応がネットワークの機能維持や早期サービス復旧につながった。「2004年の新潟県中越地震のときも、私はこのネットワークオペレーションセンターにいました。そのときの経験が、マニュアルには生かされています」とドコモの岡氏。段違いの地震の規模・範囲に加えて、津波と原発事故まで重なった3.11で得られた教訓は、このマニュアルをさらに進化させ、いっそうの災害対策の一助なることは間違いないだろう。

NTTドコモ
サービス運営部
ネットワーク統制担当
主査
岡 裕之氏

 進化するのはマニュアルだけではない。ネットワークやサービスそのものを強化するため、ドコモはさまざまな検討を進めている。ネットワークオペレーションセンターの能力増強もその一つだ。

「オペレーションシステムをより強化するための検討を行っています。また、今回のような大規模かつ広範囲の災害では、被害の全体像を把握するだけでも大変です。そこで、これまで以上に迅速かつ簡単に全体像をつかめるような仕組みの整備も考えています」(竹内氏)

 通信事業者にとって、強いネットワークづくりは終わりのないテーマだ。ドコモが大震災後に発表した「新たな災害対策」は、そのための重要なステップである。