東京に比べると、地方では建築にかけられる予算は少ない。そんな中で、隈氏は制約を逆手にとって逆転を狙う発想に磨きをかけた。代表的な建築の一つが、栃木県・那珂川町に生まれた那珂川町馬頭広重美術館だ。木材の不燃化や防腐処理などに取り組む地元の大学の研究者と偶然出会い、隈氏はその技術にほれ込んだ。

 平屋建ての美術館の特徴は切妻の大屋根だが、そこには不燃・防腐処理を施した間伐材が使われている。瓦などで葺かれていないため、「町の人たちは、完成後も『まだできてない』と思っていたようです」と隈氏は笑う。地元産の間伐材をふんだんに活用してコストを抑えつつ、隈氏ならではのユニークな建築を造りあげた。このような経験の積み重ねが、現在役立っていると隈氏は言う。

「バブルのころはコスト度外視で、派手な建築が多く造られました。状況は大きく変わり、今では日本だけでなく、諸外国でもコストオリエンテッドな建築が求められます。限られた予算の中でいかにいいものをつくるか。それは、私が90年代に学んだ重要なことの一つです」

変化を脅威と捉えるか
チャンスと捉えるか

 隈氏と桜井氏には接点がある。銀座に出店した獺祭の店舗では、隈氏が内装デザインなどを手掛けた。常識を覆してきたイノベーター同士、響き合うものがあるようだ。同じように日本全国の至るところで、次代の変革者たちが語らい、共鳴の輪を広げているに違いない。その中には、少なからぬ中堅・中小企業の姿があるはずだ。

 アメリカン・エキスプレスはチャレンジ精神にあふれた日本の中堅・中小企業がイノベーションのけん引役となり、国内外の市場で力強く成長することを期待し、そうした企業に対するサポートを通じて、日本社会に貢献したいと考えている。

 いま、時代の変化は激しさを増している。企業にとってその変化は脅威かもしれないが、見方を変えればチャンスに転化することもできる。環境変化を成長へのスプリングボードにした桜井氏、隈氏の経験は多くの示唆を含んでいる。

 同じように飛躍を目指す多くの企業、そして経営者をはじめとするビジネスオーナーを、アメリカン・エキスプレスは多様なサービスで支え続けていく。

次回の「アメリカン・エキスプレス・インサイト・ビジネス・フォーラム」は、9月22日(金)開催予定。「現場主義を貫く」をテーマに、吉野家ホールディングス会長の安部修仁氏とコメダホールディングス代表取締役社長の臼井興胤氏をゲストに招き、両氏の講演の他、塾長の米倉氏との鼎談も予定されている。ビジネスのヒントをつかむために、あるいは社外の貴重なネットワークを築くためにも、こちらからぜひ参加申し込みを。

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