インテル自動運転部門のシニアバイスプレジデントのダグ・デイビス氏は「モービルアイの買収に向けた作業は現在進行中であり、買収が完了するのは今年末ごろを予定している。ただし、買収後でも、モービルアイが生産を委託先から弊社のファブに移管する可能性は低いと思う」とし、モービルアイはインテルにとって“投資対象”という存在であることを示した。

 しかし、いずれにせよ自動車メーカーにとって、インテルが自動運転において大きな存在になったことは間違いない。

ヒアとBMW、
そしてデルファイとの連携は?

 さらに、自動車産業界がインテルの自動運転技術に注目しているのは、高精度三次元地図(3Dマップ)の最大手である独ヒア(HERE)とインテルとの連携の可能性だ。

 ヒアは、アメリカの地図企業ナブテックを前身とし、フィンランドのノキアが買収後に地図を使ったデータビジネス開発を進め、ロケーションクラウドというクラウド産業を創出した。そして2015年には、ドイツの三大自動車メーカーが共同で買収するという離れ業を見せ、さらにインテルは2017年1月、ヒアの発効株式15%を獲得したと発表した。

 自動運転を実用化するには3Dマップの利活用が不可欠であり、この領域ではヒアの他、オランダや中国、さらに日本の企業などが、3Dマップのデファクトスタンダードを狙い競争と融合を進めている。

 こうして、モービルアイとヒアという自動運転技術のキモを一気に抑え、さらに自社内に自動運転開発拠点を設けたインテル。一気に自動運転領域のキープレーヤーとして名を刻んだといえる。

 今回のオートノーマス・ドライビング・ワークショップで、インテルが表明した自動運転の量産化に向けた事業戦略には大きく二つのルートがある。

 一つは、BMWと連携し、自動運転におけるハードウエア、ソフトウエアのプラットフォームを構築し、これをインテルから自動車メーカーに直接販売するもの。今回、自動運転車の開発プラットフォームとなる「インテルGO」も紹介された。

 もう一つが、大手自動車一次部品メーカーである米デルファイと連携して、自動車メーカーに販売するケース。デルファイはこれまで、モービルアイとの共同開発を進めており、その関係を継続する形だ。

 IT大手のインテルは、果たして「ムーアの法則」の成功体験を自動運転ビジネスに生かすことができるのか。その動向にいま、自動車・IT産業の関係者の注目が集まっている。