人間との協業によって
AIの活用領域が広がる
ビジネスの世界の競争ルールを根幹から変えてしまうような可能性さえ秘めたAIだが、現在どのような取り組みが進められ、それはどんな未来を示唆するものなのだろうか。
「例えば、AIの活用例として大量の画像データの中から特徴のある画像を抽出する画像認識技術や、人の声を認識して内容を理解し、求められている情報を提供する音声認識技術が注目を集めています。こうした技術によってこれまでコンピュータが扱えなかった分野にまで活用が広がり、データの範囲もさらに広がりを見せています」
この他にも、例えば製薬の分野でもAIを駆使した新薬の開発が進められている。新薬の開発の背景には膨大な臨床データや論文などの情報がある。しかし、それらの情報全てに目を通すのは不可能である。そこで、AIが人間に代わって論文を読み込み、その知見を研究者に提供することで、新薬の開発を支援している。AIによってコストを抑制しながら短期間で新しい薬が開発されれば、大きな社会貢献につながる。
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「AIは医療機関やヘルスケア、小売業、輸送業など、さまざまな業種業態で導入が始まっています。世界の総売上上位500社を示す『Fortune Global 500』のうち3割を超える企業はすでにAIを活用していると言われています。当然、日本のトップ企業も同じ状況です」と福原氏は、AI活用が進む現状を紹介する(図2)。
一方、「AIの活用によって人間が職を奪われるのではないのか」という懸念も指摘されているが、どうなのだろうか。福原氏は「人間ができないことをAIにやってもらうという、『人とAIの協業』こそがAI普及のカギだと考えています」と話す。
AIは“匠の技”のような暗黙知の世界は不得手だという指摘もある。「人の雇用を脅かす」というより、「人間とAIの組み合わせで新しい価値を生み出す」ことが求められているのだ。そこには人間の想像を超えたビジネスやサービスを、AIによって創り出すという可能性も含まれる。
「これまでコンピュータが処理できなかったデータまで含めて、高速に処理することで、データの中から新しい法則が見つかり、それが新しいビジネスや新しいサービスにつながる可能性もあります。結果として世の中に選択肢が増えて、よりメリットを提供できるようになります。それこそがAIの目指している世界なのです」