日本企業の間で一時、人件費が安い海外へ簡単な業務を出す「アウトソーシング」が流行した。 だが経営環境が激変し、企業は経営資源をコア事業に集中させるため、 また、働き方改革の目的からも一人ひとりの生産性を上げるため、より高度な「BPO」を求めるようになっている。 それに対応できる「日本品質」のBPOが今、改めて注目されている。

人材不足解消の切り札として注目されるBPOサービス

「優秀な人材が採用できない」と採用の現場が悲鳴を上げている。年々、売り手市場の様相が鮮明となり、知名度の高い大企業といえども安閑としていられなくなった。特に医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業、卸売業・小売業の人手不足は深刻だ。

 そうしたひっ迫した状況の中で貴重な人材を経理や人事、総務のようなバックオフィス業務の定型業務に従事させていいのかという議論が広がっている。ある小売業の経営者は「バックオフィスはいらない。社員はフロントに出るべきだ」と主張する。フロントとは自社のコア業務である販売の現場である。しかしバックオフィスはいらないという発言を額面通りに受け取るわけにはいかない。バックオフィスは販売の現場のような利益を生む場所ではないが、給与計算、伝票整理に代表されるバックオフィス業務は企業にとって不可欠である。

 ではどうするか。そこで、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を活用して、自社のコア業務以外の業務を外部企業に委託する手法が注目されている。

 BPOサービスを提供する外部企業は、類似・重複業務の統合や集約、廃止を行い、属人化しがちな業務を標準化して業務効率を高めながら巻き取っていく。それによりBPOを委託した側の企業はコスト削減、業務の効率化を図ることができ、社員を利益を生むコア業務に集中させて生産性・付加価値向上を実現することができるのだ。それは今、問題になっている長時間労働・低賃金を解消し、働き方改革にもつながることになる。

 だが、先の小売業のようにBPO活用意識の高い経営者が増えているものの、全体としてみると日本は米国に比べて「経営資源へのコア業務への集中」 や「業務拡大への柔軟な対応」といった戦略的なBPO活用意識が低いことが経済産業省の調査で明らかになっている。GDPに占めるBPOの市場規模は北米の0.77%に対し日本は0.18%(2017年)にとどまる。

 BPOの活用が遅れている原因として、BPOをコスト削減の手段として認識している経営者が多いこと、BPOを導入したことにより生じる余剰人員の処遇の問題などが挙げられる。BPOをコスト削減の手段として導入する場合、業務を中国やASEAN諸国などの低賃金国にあるBPO拠点で巻き取ることになる。

 だがそれでは単純な定型業務しか遂行できない。言葉の壁や文化・習慣などの違いにより顧客企業の思いを「忖度」して動くことはなく、硬直化した対応に終始する。

 さらにBPOの効果を認めた顧客企業がより広い範囲の業務を委託しようと考えても、海外拠点の能力が追いつかないという現実もある。そのためBPOサービス提供企業の中には、国内拠点を稼働させて、顧客企業により高度で高品質なサービスを提供する動きも出始めている。