経営者が先頭に立ち
各部署に参画させる

 働き方改革で先頭に立つべきは、まず経営者(経営層)である。働き方改革によって生産性向上や人材の獲得・継続雇用を成し遂げるという強い意志を示し、人事部、総務部を巻き込んで大枠(導入目的・基本方針)を作り、続いてシステムの運用やセキュリティを担当する情報システム部門や労働組合、ダイバーシティ推進室、女性活躍推進室のような関係部署を早い段階で入れておく。

 その“根回し”を怠ると、後から入った部署が異議を唱えて議論をひっくり返し、働き方改革が頓挫してしまう。

 このように働き方改革の実現には経営者の明確な目的意識と強いリーダーシップが不可欠なのだが、「働き方改革によって長時間労働を是正すると残業代が浮く」という認識にとどまっている経営者も少なくないという。

 もっとも長時間労働の是正は経営者の意識改革だけで進むものでもない。家田氏は「根源は8時間拘束型勤務にある」と指摘する。労働時間を8時間と定め対価として定額の賃金を払っているため、生産性を上げて早く仕事が終わったとしても帰ることはできないし、早く終われば次の仕事を振られる。

 上司や同僚が残っているうちは帰りにくいし、残業をしないと仕事をしていないと評価される。社員の中には給料を増やすために残業をする者もいる。このような企業の風土・文化の問題なのである。そこで家田氏は8時間拘束型ではなく8時間終了型を目指すべきだとアドバイスする。さらに成果物主義に転換すれば勤務時間にこだわる必要もなくなるだろう。  

 働き方改革を成功させるためには、制度改革→業務改革→ICT導入→意識改革という四つの要素を順番に実現させていくことが重要だ。その第一歩として、経営者と関係部門が一丸となって手の付けやすい小さな施策や弱点の克服から始めていくべきである。ただし残された時間は、そう多くはない。企業が生き残るためにはスピード感も求められる。

(取材・文/山本信幸 撮影/和田佳久)