マンションの大規模修繕のサイクルが、12年から15年に延びる傾向にある。日々のメンテナンスさえしっかり行っていれば、大きな問題は起こらず、マンションの資産価値を維持することができる。そして、大規模修繕工事の成功のためには、建物に対する住民の日頃からの意識や過去の修繕履歴のデータベース化が望ましい。
マンションの大規模修繕サイクルに変化が起きている。外壁塗装や共用内部の床・壁・天井の張り替え・塗装などを対象とした長期修繕計画において、これまで12年サイクルで行うのが望ましいとされてきたが、「最近では3年ほど先送りして15年を目安にする例が増えてきた」。そう語るのは、NPO法人日本住宅管理組合協議会の川上湛永会長だ。
住民の建物に対する
日頃の意識が重要
NPO法人
日本住宅管理組合協議会会長
朝日新聞社社会部記者として、住宅・都市・マンション・地価問題などを取材。地域のマンション問題にも取り組み、管理組合理事長を3期務めた。2012年より現職。
日本のマンション開発の先駆けとして、またその後の建物保守、点検、改修などでも最先端の技術やノウハウを生かしているUR都市機構が管理する賃貸住宅では、現在、外壁修繕や防水工事(屋根断熱防水を除く)などの修繕サイクルを18年としているという。「その分、日々のメンテナンスを計画的に実施しているので、大規模修繕のサイクルを延ばすこと自体の問題は起きていない」と川上会長は説明する。
一般のマンションであっても、3年程度であれば、大規模修繕サイクルが長くなっても建物に関しては問題ないといわれている。ただ、そのためには日頃の建物管理や保守をきちんとやっておく必要がある。
「住民一人一人が自分の住む建物や設備へのチェック意識を持っているかどうかが重要だ」と川上会長は指摘する。
日々の生活の中でも意識していれば、外壁の汚れやひび割れなどの劣化部分に気が付くはずだ。また、簡単な診断なら住民自らでも行える。例えば外壁タイルの異常は、音で内部の状態を診断する打診棒を使えば素人でも分かる。周囲に樹木が多い好環境であれば、春先に樹液が飛んでタイルが汚れがちになる。そうした周囲の環境と建物の関係を知っておくだけでも、意識は変わる。
川上会長は「目に見える範囲、手の届く範囲で構わないので、住民が建物の状態を認識し、共有しておけば、日頃の建物管理、保守が的確になり、サイクルを延ばした大規模修繕工事も可能になる」とアドバイスする。