「震災というピンチをチャンスに変えて新たなエネルギー施策への取り組みを推し進めれば、日本のエネルギー不足の問題を解決できる」エネルギー研究の権威、柏木孝夫教授は語る。さらには世界をリードするポジションさえ日本は獲得することが可能だという。では、そのためには何が必要なのか?

柏木孝夫教授東京工業大学教授
先進エネルギー国際研究センター長
柏木孝夫氏

1946年生まれ。東京工業大学から同大学院を経て79年博士号を取得。米国商務省NBS招聘研究員、東京農工大学教授、九州大学教授等を歴任後、経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長等でも活躍。

「ありふれた言い方かもしれませんが、『ピンチをチャンスに変える』。そうすべき時機なのだと私はとらえています」

 3月11日の東日本大震災について、柏木氏はこう語る。復興策が遅々として進まない現況を危惧する指摘は、世に多数噴出している。そこには、再生可能エネルギーを軸としたスマートグリッド、スマートシティ構想の展開の遅さを指摘する声も含まれている。

 だが、経済産業省の総合資源エネルギー調査会で新エネルギー部会長も務めてきた柏木氏は、現況をこう説く。

「『エネルギー供給システムにパラダイムシフトを起こす』『電力インフラを根底から再考し、スマートグリッド等により、新しい社会を構築しよう』という気運は、震災前からありました。確かにこれまではなかなか進んでこなかった。しかし、だからこそ震災という大きなピンチが、この遅れを取り戻すうえでのきっかけになれば、と思うのです」

このピンチをチャンスに変える力に
大きな可能性がある

 原子力発電の今後に対する議論は、いまだ結論が見えない。だが、いずれの結論になるにせよ、日本のエネルギー政策は少なくとも当面、原発依存型にはなりにくい。となれば、新たなエネルギーへの施策が不可欠だ。

「すべてを失った被災地の復興に、スマートシティの導入を」との声も上がっている。そんな状況が新エネルギー構想の進展スピードアップの好機に変われば、との願いがある。