消費者との円滑なコミュニケーションを創造するための手法として注目されている「トリプルメディア」を、企業戦略に具体的にどう取り入れていくか。そんな課題を掲げる企業が増えている。自社サイトなどの「所有するメディア」、ツイッターやフェイスブックといった「ソーシャルメディア」、従来からの広告を意味する「買うメディア」。これらを有機的に組み合わせるためには、組織的なプロセス構築が必要だ。
企業のマーケティング戦略において「トリプルメディア」への関心が高まっている。昨年『トリプルメディアマーケティング』(インプレスジャパン)を出版したデジタルインテリジェンスの横山隆治氏は、この分野で積極的な発言を続けている。一方、花王Web作成部長の石井龍夫氏は、これまで数々の先進的なマーケティング施策を手掛けてきた。マーケティングの最前線に立つ2人が、トリプルメディアを有効に活用するための条件について語り合った。
――トリプルメディアの現状、各メディアの役割についてうかがいます。
デジタルインテリジェンス
代表取締役 旭通信社入社後、インターネット広告のメディアレップ「デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム」を起案設立。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。ADKインタラクティブ代表取締役社長を経て、2011年7月より現職。デジタルコンサルティングパートナーズ主宰も務める。
横山 ソーシャルメディアの急成長は大きな注目を集めていますが、一時期はやや誇張された議論もありました。しかし、従来のメディアがなくなるわけではありません。三つのメディアを連携させたコミュニケーションが重要との認識は、多くの企業で高まりつつあります。
石井 テレビを見ながら、スマートフォンで友人のブログやツイッターをチェックしている人は多い。番組に出てきた商品を、ネットで検索しているかもしれません。そんな行動のスタイルが当たり前になった時代、マーケティング活動にも広い視野が求められます。一つのメディアに閉じた活動ではなく、トリプルメディアを使いこなす方向へと進化しなければなりません。
横山 一つの課題は組織にあります。メディアごとにマーケティング組織が分断されていて、交流がほとんどないという企業も少なくありません。
石井 1人の消費者に届けるメッセージが、メディアによって異なるようでは困ります。「伝えるべきこと」が中心にあり、その伝え方をメディア特性に応じて変えることが重要。
そこで、花王は組織同士の距離感を近くしました。テレビやWebサイトというメディアごとに担当部門は分かれていますが、同じフロアに集めて連携を取りやすくしたのです。部門間の人事異動も促進し、複合的にメディアをとらえられる人材を増やそうとしています。