どのデータを捨てるのか、
問われるマーケッターの裁量

――ここ数年間で、デジタルマーケティングは急速に進化しています。

石井龍夫
花王 Web作成部長
1980年花王に入社、販売部門を経て、本社事業部門でブランドマーケティング業務に携わる。2003年からはWeb作成部長として花王のWeb活用の戦略立案と企画運営の指揮を執る。近年では、日本マーケティング協会のマーケティングマイスターやインターネット広告電通賞の審査委員長を務める。

横山 ECなどの閉じた世界では、明確にマーケティングROIを示すことができます。リアルな世界ではそれが難しかったのですが、いくつかの手法が登場しています。たとえば、シングルソース。ある人がリアルの世界でどのようなコミュニケーション接点を持ち、どのように行動したか。その一連の動きを人にひもづけて見ることができる電子マネーなどの手段が普及したことで、マーケティング施策の効果測定に新しい可能性が生まれています。

石井 私たちが欲しいのは行動データです。人の行動に即して施策の効果がわかれば、予算配分を適切に判断できるでしょう。その意味で、私もシングルソースには期待しています。

横山 一方、膨大なデータが取得できるようになったことで、それをどう扱えばいいのか戸惑っているマーケッターもいます。まず、どのようなデータを捨てるかを考える必要があるでしょう。大量のデータのなかから、どのような意味を見出すかは重要なテーマです。

石井 そこで問われるのは二つ。データのなかから何を読み取るかというスキルと、明確な目的を持ったマーケティング計画の立案です。

 トリプルメディアの時代には、消費者を巻き込んだコミュニケーションが求められます。企業の商品や伝えたいコンセプトに、消費者がなんらかのかたちで関与するようなコミュニケーション設計が重要です。