2016年度の国立大学入試で大きな注目を集めた東京大学「推薦入試」と京都大学「特色入試」。2年目となった今年度も合格者数は両校とも定員割れだったことから「ハードルが高すぎる」との指摘もあるが、国立大全体で、推薦・AO入試の定員枠拡大の流れは止まらない。
推薦・特色は定員割れだが東大・京大とも焦りはなし
2017年度が2年目となった東大の推薦入試(学校長による各校男女1人ずつの推薦)と京大の特色入試(いわゆるAO入試)。東大推薦入試の募集枠は「100人程度」で前年度と変わらず、志願者数も173人で全く同じ。
ただ、合格者数は71人で前年度より6人減った。一方、京大は17年度から農学部が全学科で実施したことなどにより、特色入試全体での募集枠は145人に広がったものの、合格者は120人で東大と同じく2年連続での定員割れ。このため、両入試とも「ハードルが高すぎる」と指摘する声は少なくない。
東大推薦入試、京大特色入試は共に書類による1次選考を経て、面接などの2次選考を行い、大学入試センター試験の結果を加味して合否を判定する。
センター試験は概ね8割程度の得点が目安とされているので、東大、京大を目指す学生からすればハードルはそれほど高くない。問題は1次選考だ。
例えば、数学オリンピックなどで顕著な成績を上げたことを示すものや全国レベルの大会・コンクールでの入賞記録など、いずれかの分野で飛び抜けた才能があることを証明するもの。あるいは、国際バカロレア(IB)資格やTOEFLのスコアなど異文化コミュニケーション能力を証明するもの。東大、京大とも学部によって違いはあるものの、そうした書類を基に1次選考が行われるのだ。高い学力を維持しながら、それ以外の分野での秀でた才能や能力を高めるのは並大抵のことではない。志願者が増えない大きな理由はここにある。
それゆえ、「(東大推薦入試・京大特色入試は)現状では初めから狙って受けるものではない」と大学通信常務の安田賢治氏は指摘する。
「受験の選択肢が増えるのはいいことなので、たまたま推薦要件を満たしている学生であれば、チャレンジしてみる価値はあるのではないか」(安田氏)。
推薦・特色入試で落ちても、一般入試で巻き返しを図ることはできる。ただ、推薦・特色の2次選考では面接やグループディスカッションなどが行われるので、一般入試対策と2次選考対策を同時に進めなければならず、その負担も小さくない。
こうした理由から、2年目になっても志願者は思ったほど増えず、定員割れの結果となったわけだが、「東大、京大はハードルを下げてまで、募集枠を埋めようとは思っていないはず。逆に、本当にほしい学生が集まれば、募集枠以上に合格を出すこともあるだろう」と安田氏は見る。
事実、両大学とも法学部は2年続けて募集枠以上の合格者を出している。
それに、両大学が推薦・特色入試を始めたのは、高大接続改革の受け皿づくりの意味がある。高校教育、大学入試、大学教育を一体的に改革しようと文部科学省が進める高大接続改革に基づき、高校教育の現場では、従来型の「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」を加えた、いわゆる「学力の3要素」を総合的に指導しようとし始めている。とくに中高一貫校では、その動きを先取りしている。
これに対して、現状の一般入試では、「知識・技能」以外を判定することは難しい。そこで、学力の3要素のうち、「知識・技能」以外も「総合的・多面的」に判定するために推薦・特色入試を新設したという側面もある。
今後、高校教育で「思考力・判断力・表現力」や「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」を身に付ける学生が増えれば、東大推薦・京大特色の志願者も自然と増えていく可能性がある。
さて、東大推薦・京大特色で合格者を出しているのは、どんな高校なのか。本誌では高校別合格者のランキングを作成した(次ページ参照)。