AI活用の環境を整備し
自らも活用するインテル

 このSaffronを提供しているインテルでは、AIを活用するための包括的なポートフォリオを強化している。CPUはもちろん、画像認識や音声認識などの処理に最適化されたアクセラレータ、ソフトウエアの開発環境など、AIを加速させるプラットフォームの整備を急ピッチで進めている。

 Saffronの買収もそうしたAI戦略の一環だ。他にも機械学習のNervana、組み込み機器向けのMovidiusなどAI関連の企業の買収を進めている。今年4月に開催されたイベント「インテル AI Day」では、機械学習のPreferred Networksとの協業も発表している。

 また、インテル自身もAI活用に積極的に取り組んでいる。マーケティング分野では2016年に「マーケット・インテリジェンス・システム」を開発。同社の顧客システムのデータと、ニュースや特許情報、雇用情報など膨大な量のパブリックデータとを組み合わせ、機械学習を使って、相関関係とパターンを特定し、独自のインサイトを生成して、高度な分析に基づくマーケティング活動を展開している。コンテンツとプロモーションの優先順位付けによって、1億ドル以上の収益増加に結びついたという。

心臓病診断やマーケティング支援など各方面で本格化するAI活用(写真はイメージです)

 また、ものづくり企業としてのAI活用も最先端を行っている。世界最大のチップメーカーであるインテルにとって工場のパフォーマンスの向上は最重要テーマだ。しかし、製品ポートフォリオが拡大し、市場での製品サイクルが短くなる中、製造プロセスの複雑化とそれに伴うデータの増加という課題に直面していた。

 そこで同社ではIoTソリューションによって工場の自動化を強化するとともに、予測分析ソリューションを導入することで、工場のスマート化を推進。市場投入までの時間の短縮、リソース使用率の向上、生産量の増加、そして数百万ドルのコストの削減を実現している。

 こうしたインテル自身のAI活用の成果は、当然、顧客のAI活用のリファレンスモデルとして提供されていく。AI活用のためのポートフォリオを充実させ、自らのビジネスを通してノウハウの蓄積を進めるインテルの今後の動向からは目が離せない。

<本文中で紹介した事例の詳細は以下からご覧になれます>
AIによる心臓疾患の診断支援(英語)
金融業におけるAIを活用したマーケティング(英語)
インテルにおけるAIを活用したマーケティングと工場の自動化
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