2020年は戦後教育の節目の年となる。10年に一度の小中高の学習指導要領改訂に合わせて、共通1次試験以来40年間続いてきた大学入試制度が大きく変わる。
両者を同時に変えることで、日本の教育は大きく変貌を遂げて行く。それは、産業革命以来300年ぶりの大変動期にある世界で、子どもたちが21世紀の半ばを生き抜いていける基盤をつくるための試みでもある。
保護者、とりわけお母さん方に、この大きな時代の変化への理解と対応が求められている。OECDのアドバイザーも務め、教育改革の最前線で奮闘中の文部科学大臣補佐官・鈴木寛氏に話を聞いた。(インタビュアー/後藤健夫)
150年ぶりの教育制度改革
世界の動きに後れをとった日本
1964年兵庫県生まれ。灘中学校・高等学校、東京大学法学部卒業。86年通商産業省(現・経済産業省)入省、ネット ワークインフラの整備などに尽力。通産省在任中から大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰。99年慶應義塾大学SFC環境 情報学部助教授を経て、2001年参議院議員。文部科学副大臣を2期務める。14年2月より、東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大 学政策メディア研究科教授に同時就任(国立・私立大正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号)。15年2月より現職。他 に、日本サッカー協会理事、日本教育再興連盟代表理事、日本スポーツ振興センター顧問、ストリートラグビーアライアンス代表な どを務める。 (写真:石原敏彦)
―教育には世の中の進む先を見越していく側面があると思います。これから何が起きようとしているのでしょう。
鈴木 私も役員として関与しているOECDでは、「エデュケーション2030」という、今から13年後の教育を構想するプロジェクトが進んでいます。
2020年以降、学習指導要領改訂と同時に大学入試制度も変わりますが、これらの対象となる子どもは2100年まで生きる世代です。これから先の日本が直面する山あり谷ありの世界を生き抜くための土台となる教育の基盤づくりをしなければいけない。
ところがわれわれは相変わらず20世紀の頭で考えようとしているから、極端に言えば2世紀分のずれがあります。
私は「卒近代」と呼びますが、産業革命以来300年間続いた近代化を乗り越える激動の時代が始まっている。現在進められている教育制度改革は、明治維新以来150年ぶりのものと言っていい。
「激動」と言われると日本人はすごく不安になります。しかし、リスクとチャンスはイーブンのものだから、一方では思いもかけないような面白いことも起きる。
特にお母さん方には、こうした時代を生き抜くための力を子どもたちに付ける機会や環境について知ってほしい。
エデュケーション2030
Future of Education and Skills:Education2030
OECD(経済協力開発機構)が、各国の教育制度の質と公平性を改善する取り組みを通じて、教育に関する持続可能な開発目標を30年までに達成できるよう、検討が行われている。日本からは文部科学大臣補佐官の鈴木氏の他、高校の教員、大学や文部科学省、自治体などの関係者が参加している。人工知能の進化により、未知の仕事に直面する新しい時代にふさわしいコンピテンシー、カリキ ュラムや授業のあり方、学習指導方法(アクティブラーニングなど)、学習評価のあり方など包括的な内容を扱う。ここでの議論は 現在進行中の教育改革にも順次反映されていく。