―経営学部の中から、イノベーションを意識した教育をしようという人が徐々に出ています。

鈴木 今まではR&D主体でしたが、これからは産学連携して人材開発を一所懸命にやるということです。産業界から明確なメッセージを出すべきです。

 ただ、共通1次世代が経営幹部になってきました。ここからおかしくなっている(笑)。

―われわれの世代の課題です。

鈴木 国立大で記述式試験を導入しているのは4割のみ。残り6割は文章を書かずに入学している。

 だから、レポートを課せない。参考文献が読めない。不読書率は、小学校4%、中学校は50%まで上がったのを15%まで下げましたが、高校になると50%。だから、記述を10割にする(笑)。

―トップ層は勝手にやるでしょうが(笑)、問題は中間層です。

鈴木 どんな制度改革も中間層のためにやるものです。この層がどちらを向くかで社会の動きが変わります。
先日、アメリカの有名大学の前総長と話をしていたら、就職の際にクリティカルシンキングの成績を示すCLAを各企業は見ると。

 日本でも、就職人気ランキングの上位10社が、就活の際にはこのCLAと民間の英語テストを見ますよと採用要領に一行加えてくれたら、学生は劇的に変わります。中教審での議論も経団連でのコンセンサスも必要ありません。

 文科省でも採用シートに「留学経験があれば書け」と一行記入欄を設けただけで、新卒職員の英語の平均点が劇的に上がりました。世の中を変えるというのはそんなものです。

CLA
The Collegiate Learning Assessment
 大学教育のラーニング・アウトカム(学習成果)を測定する手段の1つで、社会生活や職業生活に必要な批判的思考力(critical thinking)や分析的思考(analytic reasoning)、文書作成能力(written communication)、問題解決能力(problem-solving skills)などの横断的・高次思考スキルを対象とする。アメリカの大学では入学時のSATとCLAを比較、5段階で自大学の教育成果を評価している。

 OECD の「高等教育における学習成果の評価」(AHELO)プログラムのジェネリックスキル(汎用的技能)評価でも標準テストとして用いられている。

 

すずかんの一言 ③

数学で論理的思考を身に付けよう!
 今は学生が易きに流れているが、今後は文理融合型と科学探究型しか存在しえない。明らかに理工系に進んだ学生の方が年収は高いし、受験のときに数学をきちんと勉強したかが今後問われます。文系の人は、ロジカルシンキング(論理的思考)を鍛えるためにも幾何の証明問題だけはやったほうがいいでしょう。