私立文系にも入試改革の波が 
問われる「学力の3要素」

 入試問題の変化は国公立大学だけではない。上智大学ではこんな記述問題が出題された。

 フランス革命と「人および市民の権利の宣言」(1789年宣言)の200周年にあたる1989年7月に開かれた先進国サミットの席上、「人権ならイギリスの方が先」と言ったイギリスのサッチャー首相(当時)に対して、フランスのミッテラン大統領(当時)は「しかし、世界を一まわりしたのは1789年宣言だ」と応酬したという。たしかに、「1789年宣言」は「世界を一まわりした」。それはどういう意味か。具体例をあげながら120字以内で説明しなさい。

(2015年 一般入試〈TEAP利用型〉世界史)

 膨大な知識を求める出題が中心であった私立大学の一般入試の世界史が、説明を求めるような記述問題として出題され始めている。

 このように入試問題は着実に変わってきている。

 今回の大学入試改革は「学力の3要素」をすべての受験生に対して評価しようとするものである。 従来、センター試験や私立大学の一般入試では主に「知識・技能」を評価していた。国公立大学の2次試験では「思考力・判断力・表現力」を評価することもあった。そして、AO・推薦入試では主に「主体的に学習に取り組む態度」(意欲)を評価してきた。

 これまでは学力の一部しか評価していなかったが、個々の受験生に対して3つの要素をバランスよく評価していく―という理解があれば、今の大学入試改革の方向性が分かりやすくなるだろう。

「もっと知りたい」という知的欲求で知識が蓄積されて定着するものになれば、必ずしも明るいとは言えないかもしれない子どもたちの未来を、明るくできるかもしれない。その大事なポイントは受動的学習から能動的学習へと質的な転換を図る高校教育改革である。大学入試も高校教育も改革が求められているのである。