自社の本業と切り離すことで、比較的自由な発想での社会貢献を可能にする。それがCSR(企業の社会的責任)の一つのアプローチだとすれば、一方には、本業を通じた社会貢献によってCSR活動を長期に継続していくという考え方がある。そのいずれとも異なる「第三の道」によって独自のCSR活動を展開しているのが、通販老舗の千趣会だ。顧客との強い関係を生かしたCSRの仕組みとはどのようなものか──。千趣会の取り組みに、CSRの新しい可能性を探る。

再生可能エネルギーの可能性を小学生に伝える

 去る8月2日、小学生を対象にした学びと体験のイベント「学びのフェス(主催:毎日新聞社・毎日小学生新聞)」が東京・千代田区の科学技術館で開催された。37の企業や団体が参加し、税金や仕事などの社会分野、インターネットやプログラミングなどのIT分野、デザインや創作などのクリエーティブ分野ほか、多岐にわたるテーマで講演やワークショップを提供した。

ぬまっち先生の再生可能エネルギーの講義は分かりやすく、専門知識のない小学生たちも興味深く聞き入っている

 このイベントに「エネルギー」をテーマに参加したのが、通販老舗の千趣会だった。「生み出せ!未来のエネルギー! 世界一やる気を出す!ぬまっち先生出張授業」と題された講演は、再生可能エネルギーの可能性と、それが人々の生活や未来にどのように結び付いているかを学ぶことを目的としたもの。午前と午後の2回開催された授業には各20人、計40人の小学生が参加した。

「ぬまっち先生」というのは、この授業を担当した東京学芸大附属世田谷小学校の沼田晶弘教諭の愛称である。沼田教諭は、千趣会のCSR活動「えがおの森」の一プログラム「ハハトコのグリーンパワー教室」の講師を務める人気教師で、現在、全国の小学校を回って再生可能エネルギーについての出張授業を続けている。「学びのフェス」での今回の授業は、そのいわば特別企画として実施されたものだった。

 授業は講義形式の前半部分とワークショップ形式の後半部分とで構成されており、前半の講義では「エネルギーがなくなって困ること」を考えることから始まり、再生可能エネルギーの普及が私たちの将来にもたらす影響について理解する内容となっている。エネルギー問題が本格化するのは参加した小学生たちが大人になる頃という事実を示し、今の大人以上に解決への意識が求められることを伝えた。

電気を起こすことは思ったよりも難しい
手回し発電機に悪戦苦闘の小学生たち

 後半のワークショップは、小学生たちが非常用の手回し発電機を用いて、自分の力で電気を起こしてみるという体験学習である。子どもたちは懸命に発電機のハンドルを回してみるものの、起こせた電気はわずかな量で掃除機や加湿器といったミニ家電に接続してみると、動く時間は極めて短い。参加した小学生たちは自分たちが普段使っている家電製品をイメージしながら、身をもって電力を生み出すことの大変さを実感したようだ。