「サステナブルなCSR」を実現するために

 一方でこの募金の仕組みには、「CSR活動への評価が定量的に示される」という側面もある。募金金額の多寡は、そのまま活動に対する支持の強弱を表すからだ。

 企業のCSR活動には、売り上げや成果といった指標がないために、内向きの活動となってしまう危険性が常にある。しかし、顧客や会員など外部のステークホルダーにCSRに参画してもらうことによって、「企業の自己満足のCSR」という落とし穴にはまることを回避することが可能になる。この点にも、千趣会のCSRの仕組みの独自性があるといっていい。

 もう一点、その会員参加型の仕組みが「サステナブルなCSR」の実現につながっている点も強調すべきだろう。多くの企業のCSR担当者は、いかに自社のCSR活動を継続的なものにしていくかという悩みを抱えている。営利を目的とする企業が本業と関わりの薄い活動を長く続けていくことは簡単ではない。近年、「本業を通じたCSR」に取り組むことで活動の継続性を担保しようとする企業が増えているのはそのためだが、事業とひも付いたCSRには、業績が悪化すれば予算を削減するか、あるいは活動そのものをやめざるを得ないというリスクがある。

ビジネスの根幹と一体化したCSR

 本業と切り離されたCSRと、本業を通じたCSR。一長一短があるそれらの手法に対し、「顧客の意思を反映するCSR」という第三の選択肢を示しているのが千趣会の取り組みである。もちろん、この道を進み続けるためには、顧客との関係を深めるための不断の努力が必要になる。千趣会のブランド力が弱まったり、信頼性が損なわれたりしてしまえば、CSRの活動を続けていくことは不可能になるからである。しかし、こう言うことも可能だ。果たして顧客との関係を強める努力を必要としないビジネスなどあるのか、と。

 顧客との強い関係がなければ、そもそもビジネスは成立しない。従って、顧客との関係に支えられたCSRは、まさしくビジネスの根幹と一体化した取り組みということになる。そう考えれば、サステナビリティという点において、「ブランドや関係の力を生かしたCSR」は「本業を通じたCSR」にも勝る潜在的な可能性があるとはいえないだろうか。

 自社のブランド力や信頼性、顧客との関係をいま一度見直し、それを生かしたCSR活動を設計する──。そんな試みが広まっていくことに期待したい。