2008年のiPhoneの国内販売を契機にブレークした「スマートデバイス」だが、企業向けのソリューションが出揃ってきたことで、業務改革に活用することが増えている。スマートデバイスの普及が、事業戦略やビジネス・コミュニケーションにもたらすインパクトを、ITジャーナリストのまつもとあつし氏に聞いた。

まつもとあつし
ジャーナリスト/コンテンツプロデューサー
東京大学大学院情報学環 DCM修士
ネットベンチャー、出版社、広告代理店勤務などを経て、現在東京大学大学院情報学環の博士課程に在籍。コンテンツプロデューサーとして活躍する傍ら、ITジャーナリストとして取材、講演活動を行う。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)など。

「スマートデバイスは、コンピュータ市場に大変革をもたらし、ビジネス・コミュニケーションの質そのものを大きく変えていく存在です」

 こう断言するのは、ジャーナリスト・コンテンツプロデューサーで、『スマートデバイスが生む商機』の著者・まつもとあつし氏だ。

 IT専門の調査会社であるIDCのレポートによると、2010年のモバイル市場におけるスマートデバイスの出荷台数は約550万台と推定され、11年にはノートパソコンの出荷台数を上回る予測となっている。

 無線LANなどによる高速なネットアクセス環境の整備やクラウドサービスの進展により、必要なデータにいつでも、どこからでもアクセスできるようになったことが、追い風となった。

 さらに、低コストで手軽な情報端末であることが普及の大きな要因で、パソコンとしての機能を備えながらも、手軽で快適な操作性が、利用シーンの拡大につながっている。タブレット型のスマートデバイスが、学校教育に採用され始めているのも、その一例といえるだろう。

 もちろん、ビジネスの現場においても例外ではない。
「ノートパソコンと異なり、タブレットは軽量でバッテリーが長持ちしますし、電源を入れればすぐに使えますから、これまで紙ベースで処理されていたような業務分野に浸透していく可能性があります」(まつもと氏)

 なかでも、ITによる業務改革を図ろうとする企業にとってポイントとなるのが、「ビジネス・コミュニケーションの改善」と「トータルコスト削減」の二つの効果だ。



2010年第3四半期の国内スマートフォン出荷台数は約155万台、年間では約500万台と予測される。また、タブレットPCの出荷台数は10年は約50万台、11年は約142万台と予測。一方、ノートパソコンの出荷台数は約803万台。スマートデバイスの伸びに比べて減少傾向にあるのがわかる。

資料:IDC JAPAN,12/2010