紙の削減は最もやりやすい改善策

 最も取り組みやすく、目に見えて効果がわかる改善が、「ドキュメント(紙、電子データ)」の削減だ。

 スーパーマーケットを運営するある会社では、店舗ごとの売上集計表を印刷して、部署内の全員に回覧していた。売上データはシステム上でも閲覧できたが、印刷することが長年の習慣だったのである。担当者は、HIT法で業務プロセスを可視化していく過程でこのムダに気づき、業務そのものをやめることを提案し、すぐに実施された。

 紙が使われる業務の代表といえば会議がある。多くの会社では、次のような光景がよく見られる。会議前、担当者が提案資料を作成し、印刷したものが参加者全員に配られる。会議はその資料をベースに進められ、会議終了後、担当者は会議内容をもとに資料を修正し、上司に承認を得てから役員や経営者に提出する……。

 この一連の流れにはさまざまなムダが隠されている。資料を印刷して配付するムダ、資料を修正するムダ、上司がそれをチェックするムダ、などだ。

 とある会社でもこのような会議のやり方をしていたが、HIT活動によってムダに気づき、改善を行った。会議の場に資料を持ち込まないことをルール化したのだ。資料はプロジェクタで映すため、印刷して全員に配る必要はなくなった。また、会議中の決定事項をその場でPCに打ち込むやり方にしたので、会議が終わった時には、資料の修正、関係者・上司への内容確認も同時に終了することになる。これまで会議資料づくりでムダな残業が多かったこの会社では、残業時間が大幅に削減された。

 さらにある会社では、総務の社員が「事務用品費が必要以上に多い」と感じていた。HIT活動に参加した担当者は、事務用品の利用にルールを設け、各部署から必要と申告されたものだけを購入して、共有して使用する方式を導入した。これにより不要になった事務用品は2トントラック1台では収まらないほどの量で、倉庫の半分のスペースを空けることができた。同時にこの会社では紙の廃止も進め、各部署ごとに平均して年間約60万円の紙代削減を実現している。