コスト削減の要求にとどまらず
クラウドの真の価値を追求
――企業におけるデジタル変革に向けた要請が高まっていることを背景に、基幹システムの導入のあり方について変化は見られるでしょうか。
平田:明らかに変化が見られます。例えば、仮にERPを導入するにしても、お客様のほうでは、将来的な活用を見据えた付加価値といったものを追求される傾向が高まっている印象です。先ほどから話題にあがっているAIなどを合わせて導入していくというアプローチを検討されるお客様も、もちろん増えています。そうした中、システムインフラとしてクラウドを活用することの重要性についての認識も高まっているようです。ディープラーニングにせよ、コグニティブ・コンピューティングにせよ、その処理すべき対象は、IoTの仕組みなどから収集される膨大なデータにほかならず、処理の精度を高めていくうえでは、どれだけ大量のデータを蓄積していけるかが重要なカギを握っていると言っていいでしょう。増え続けるデータを格納し、処理していくには、当然、システムリソースをダイナミックにスケールさせていくことが不可欠であり、そうした観点からもシステムインフラとしてクラウドを採用することは、いわば必然だと言えます。
我妻:クラウドの持つそうした柔軟性や拡張性は、アジリティ、つまり“Time to Market”の短縮にも貢献します。いち早く変革の取り組みを実践してこそ、市場での競争優位が得られるわけで、仮に一気に多額の投資を行うことが難しいケースでも、クラウドならまずはスモールスタートで変革に取り組み、そこでの成功体験をベースに、投資規模を徐々に大きくして変革の取り組みを拡大していく、あるいは新たな付加価値を追求していくというアジャイルなアプローチを採っていくことも可能です。そうした意味からも、クラウドはデジタル変革と非常に親和性が高く、単純にシステムリソースを安価に利用するための手段であるばかりではなく、いわば“時間を買う”手段ともなり得るわけです。
IBM では、クラウドとそれを取り巻く環境は次のように変化してきていると考えています。まず、クラウドはコスト削減の手段以上に、ビジネス・モデルやビジネス・プロセスの変革を実現する手段としての役割がより重要になってきています。 次にデータの価値がこれまで以上に重要になっています。AI / コグニティブ・システムが意思決定において果たす役割は益々増大しており、経営を左右するといっても過言ではありません。そのため、より多くの企業内で潜在して活用されてこなかった、かつ洗練されたデータが必要になっています。データは貴重な経営「資産」なのです。さらにクラウドに移行するシステムや、モダナイゼーションに必要なインフラなども複雑化しており、それに伴ってシステム運用のリスクが大きくなっています。
桐生:おっしゃるように、クラウドの導入を検討されるお客様が増えている一方で、最近ではとくに導入検討を行う際のお客様の意識というものも確かに変わってきていると感じています。例えば1~2年前であれば、「クラウドにすると、どれくらいTCOが削減できるか」といったことがお客様の最大の関心事だったのに対し、最近では「クラウドによって、どういうことが実現できるのか」といったクラウドの付加価値に関心を寄せるお客様が増えているという実感です。かねてより言われてきた「クラウドファースト」といったキーワードの内実も、今日では確実に変化してきているのではないでしょうか。
【資料】 IBMのOracleクラウドへの取り組みとソリューション事例
【参考ページ】 IBMのビジネスコンサルティング
【参考ページ】 IBMのクラウドアプリケーション・サービス
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