増え続ける電子データ、なくならない紙文書。社内にある情報資産をどのように管理し、活用するかは大きな課題だ。電子記録や署名の分野で調査研究活動を行い、海外企業や行政機関の動向にも詳しい木村道弘氏に、ドキュメント管理の最新事例を聞いた。

一般財団法人
日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)
電子情報利活用推進部
主席研究員
木村 道弘

 紙、オフィス文書、電子メール、画像など、企業は日々さまざまな情報を生成している。特に電子データは情報技術の進展とともに急激に増加し、その管理が問題化している。

 たとえば文書を保管するための共有ファイルサーバーがあっても、保管方法やファイル名の付け方などのルールが徹底されていない企業は多い。それではサーバー内が未整理のファイルで溢れかえるばかりか、類似文書が複数存在し、どれが最新版なのか判別がつかない。重要な文書が共有サーバーではなく誰かの個人PCに保管されていることも……。

 情報の管理がずさんだと、ファイルを探すのにムダな時間が発生するだけでなく、社内に存在する貴重な情報を活用することもできない。時には個人情報の漏えいや、不祥事が起きた際に必要な説明文書の紛失にもつながり、経営責任を問われる事態に発展することもある。

製品企画のプロセスを見ても、調査から製品化の承認までに多種多様なドキュメントが介在することがわかる。業務の流れや変更の履歴がわかるかたちで、すべてのドキュメントを管理するのが「ケース管理」の手法だ
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「文書や記録を適切に管理できていないということは、必要な情報が必要なときに見られる仕組みがないということ。経営者にとって、航空計器のない飛行機で雲のなかを操縦しているようなものです」

 そう指摘するのは、日本情報経済社会推進協会で電子記録分野の調査研究を行っている木村道弘氏だ。

一つの案件情報を
箱にまとめて管理

 そうした問題を解決する手法がドキュメント管理だ。コンテンツ管理、記録情報管理なども同様の目的で使われる。木村氏が特に推奨しているのが「ケース管理」の概念を含むドキュメント管理ツールだ。

 ケースとは案件や箱のことで、ケース管理とはその名のとおり、一つのフォルダのなかに一つの案件に関する情報をすべて集約する管理手法だ。