ちなみに、日本企業で働く人のエンゲージメントの低さは、多くの国際調査で10年以上繰り返し報告されている。グローバル・エンゲージメント・レベルの調査(米タワーズペリン調査報告・2005年実施)によれば、日本は「非常に意欲的」が最低ランク、「意欲的でない」が2番目に高く、「世界最下位と言ってよい」(高橋社長)状態なのだ。

日本企業の社員のエンゲージメントは低い

 一般的に日本人は会社への忠誠心が高いイメージがあるが、それを覆す結果だ。

「一昔前まで、日本企業での忠誠心は、正社員の終身雇用、年功型のS字カーブの給与体系を土台に、自ずと生まれてきたところがある。しかし、いまやバブル崩壊やリーマンショックを経て、非正規社員の割合が40%近くになり、正社員であっても賃金カットが珍しくない時代。企業が従業員のエンゲージメントの向上に無策のままでは、仕事へのモチベーションが低下し、業績の低迷を招きかねないのです」

社員のモチベーションを“正しく”上げる

 ではエンゲージメントを高めるため、経営者は具体的に何をしなければならないか。この段階で、多くの企業経営者に誤解と錯覚がある、と高橋社長は言う。

 キーワードは、モチベーションという言葉である。エンゲージメントの向上にはモチベーション(動機づけ)が必要になるが、その方向性が間違っているのだ。

 陥りがちなのが、ES(従業員満足)を上げようとしてしまうことだ。

「たとえば、テレワークやフレックス制度、ノー残業や副業の公認、オモシロ人事(ユニークな手当や福利厚生)など。誤解を怖れずに言えば、“従業員のわがままに付き合う”こと。社員のわがままに寄り添って、一人ひとりの不満因子を排除することが“働き改革なのだ”という錯覚に陥っているのです」

 ESを高めるために企業活動を行っても、企業の業績アップとは何の関係もない。むしろ、企業の既存の収益配分の労働者側比率を高めるだけ。一歩間違えるとルールが損なわれて“無法地帯”となり、いずれ修正が効かなくなってしまう。

 一方のエンゲージメントとは、社員の本質的なところで会社への貢献意欲を高めること。それこそが“正しい”モチベーションの上げ方であり、そこではじめて企業の提供するサービスや商材の付加価値を高めることができ、企業業績に好影響を与えられる。

 モチベーションに対する両者のアプローチの仕方は、似て非なるものなのだ。

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