NTTドコモは2020年のリリースをめざして、第5世代移動通信システム「5G」の研究開発を推進している。高速・大容量、低遅延、多数の端末との接続という三つの特長を持つ5Gには、産業界からの期待も大きい。そこで、同社は「5Gトライアルサイト」を開設。パートナー企業と連携して、新しい価値づくりを進めている。その中の1社であるコマツとNTTドコモのキーパーソンが語り合った。
稼働管理システムに
不可欠な通信網
常務執行役員
ICTソリューション本部
本部長
開発本部 副本部長
中野一郎氏
中村 2020年のサービス提供開始をめざして、当社は第5世代移動通信システム「5G」の研究開発に取り組んでいます。5Gの特長は大きく三つ。現在と比べて桁違いの高速性・大容量、低遅延、多数の端末との同時接続が可能になることです。通信は人々のライフスタイルだけでなく、企業のビジネスにも大きな影響を与えます。5Gを活用することで、今までにないサービスやビジネスモデルが生まれると期待しています。
中野 コマツの建機などには、稼働管理システム「KOMTRAX」が装備されています。機械の位置や稼働状況を把握し、より良いサービスを実現するための仕組みです。建設現場などで働く建機からデータを集めるには通信網が欠かせません。建機への標準装備が始まった01年ごろから、NTTドコモとのパートナーシップはより強固なものになりました。約15年で通信の能力は向上し、以前よりも多くの情報を収集することができるようになりました。5Gが実現すれば、さらに高度なサービスが可能になるでしょう。
安全に違和感なく
建機を遠隔操作する
取締役常務執行役員(CTO)
R&Dイノベーション本部長
中村 寛氏
中村 ビジネスにおける通信の要件を最もよく知っているのは、各分野で豊富な経験を持つ企業のみなさまです。そうしたパートナーのニーズに耳を傾けながら、私たちは5Gのビジネスへの適用範囲を広げていきたいと考えています。主役はそれぞれの企業のみなさまであり、当社はあくまでもサポート役です。そうした考え方をベースに、今年5月に「5Gトライアルサイト」をスタートさせました。コマツさまとも5Gの電波を使った実証実験を行わせていただいています。
中野 当社が行っているトライアルの中身は、遠隔からの建機の運転です。そのためには、離れた場所にいるオペレーターと建機との間でリアルタイムの通信を行う必要があります。建機をオペレーターの視界内で動かす遠隔運転は以前から行っていますが、今回は視界が届かない場所から操作します。
中村 5Gなら4K、8Kの動画も送ることもできます。より高精細な動画を低遅延で送ることが可能となります。遠隔地のオペレーターが安全に、違和感なく操作できるよう、当社としては精いっぱいサポートしていきたいと思っています。
実際に、遠隔操作に求められる具体的な要件とはどのようなものですか。
中野 ポイントは画像の精細度と通信の低遅延です。きれいな画像を見て運転しようとすると、その分、画像がオペレーターの元に届くまでに時間がかかります。画像データの通信にコンマ1秒の遅延があると、事故につながる可能性もあります。こうした観点で、5Gのスペックは遠隔操作の要件を満たしています。ただし、何らかの理由でデータに欠損が生じた場合なども考慮し、ある程度余裕を持たせた強固なシステムを構築する必要があります。