押谷:おっしゃる通りです。特にERPの導入について言えば、本来は財務・会計情報をはじめとするビジネス情報やオペレーションの共通化というところに主眼が置かれているものと思いますが、結果的には、どちらかというと業務効率化とかそういったところに軸足がシフトしてしまっていて、例えば今まで人手でやっていたところを自動化できるようになったとか、そのような効果が強調される傾向にあったと思います。重要なのは、やはり企業としてのパフォーマンスをしっかりと見るということで、せっかく集めた情報を元に経営のPDCAサイクルを回すなど、有意に生かすような仕組みとして真剣に捉えないと、日本企業は本当に”ジリ貧”になってしまうのではないかと危惧しています。
自社の成長性や収益性への貢献が
ファイナンス部門の重要な役割に
――PwCでも、グローバルビジネスを支える、そうしたERPの"あるべき姿"による活用についての提案を積極的に行っていらっしゃるものと思いますが、それに向けて顧客にはどのような指針を提示していますか。
押谷:そこは、経営者のモチベーション、マインドセットといったものに負っているわけですが、全社的に推進していこうということになればコンセンサスというものが重要です。特にIT部門ではシステムの日常的な維持管理を考えると、当然リスクは取りたくない。必然的にシステムの導入には消極的になってしまいます。そこでは、やはりファイナンスの立場からCFOが強く働きかけていく必要があると思います。今日では、クラウドといったものもあり、IT部門の手を煩わせることなくERPの導入、立ち上げを進めることも可能です。そうしたところで、まずは実践してみて、小さな成功体験を作り上げ、それに基づいてCFOが旗を振るかたちで、社内的なコンセンサスにつなげていくという方法も効果的だと考えます。
クラウド・アプリケーション事業統括
ERP/EPMクラウド事業本部長
桐生 卓 氏
大学卒業後、大手外資系アプリケーションベンダーに入社。2009年日本オラクルに入社し、30代で執行役員としてFusion Middleware事業統括本部長に就任。2015年より常務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括ERP/EPMクラウド統括本部長として、SaaS事業戦略を牽引している。
桐生:そうした意味で、今日、ビジネスがデジタル化の時代を迎えて、IT部門にも自社のビジネスを先導していく役割が求められていますが、ファイナンス部門にもそれと同様のことが求められていると言えそうですね。とりわけこれまで日本企業のファイナンス部門においては、どちらかと言えば、財務会計や制度会計といった、定型的な業務をしっかりと実践していくことを旨とし、管理会計的な視点から経営に対して積極的にアドバイスなり提言なりを行うということをあまりしてこなかったわけですが、今後に向けては、そうしたところにも組織の活動領域を広げ、自社の成長性や収益性に貢献していくことが求められてきているのでしょう。
押谷:おっしゃる通りだと思います。事実、そういう変革に向けて動き出しているCFOの方々が増えているという印象です。そうした観点で、CFOは今後、会社のパフォーマンスに責任を持つCPO(Chief Performance Officer)になっていかねばならないと考えます。
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