リーマンショックに端を発した金融危機からの立ち直りもつかの間、東日本大震災やギリシャ危機に続くユーロ不安、過去に例のない円高など、経済・金融環境は不安定さから抜け出せないでいる。こうした環境にあって、中長期的なマネー&ライフプランはどうあるべきか。ファーストプレイス代表取締役の小林基男氏に聞いた。

小林基男氏
FPオフィス ファーストプレイス
代表取締役 CFP
証券会社、生命保険会社で金融商品個人営業、ライフプラン設計、商品研修などに携わった後、2001年にファーストプレイスを設立。FPコンサルティング業務やセミナーなどに活躍。著書に『はじめて学ぶお金のふやし方』(ナナコーポレートコミュニケーション刊)。

 「目まぐるしく市場環境が変化するなかで、自分の資産の現状を把握できない人が増えているようです」と、小林基男・ファーストプレイス代表取締役は指摘する。さまざまな環境変化について、メディアなどで情報を収集しているものの、「自分の資産がどのような要因で価値を減じているのか、環境変化が自分の資産にどのような影響を与えるのかを、明快に分析できないのです」。

資産の棚卸しと
四つの分散を徹底

 そんな人に小林氏が勧めるのが、資産の棚卸しだ。半年に1回を目安として、資産の現状を一覧できるようにする。注目すべき項目は、意外に少ない。投資・運用先ごとに、前回のモニタリング時の評価額と現在の評価額、さらに評価額の増減の理由が重要なのだという。

 「なにより大切なのは、資産全体の構成をしっかりと理解することです。たとえば外貨建ての資産が軒並み評価額を下げているのは、円高が要因の一つと考えられます。そして、今が円高のピークだと考えるなら、外貨建て資産の割合を増やすといった、今後の方向性を見出せるわけです」

 ここで注意したいのは、運用先の配分に対する考え方だ。小林氏は、「どれくらいの収益率を目指すのかが決まれば、おのずと資産の配分比率、つまりアセットアロケーションが決まってきます」と言う。たとえば、高めの収益目標を立てるのなら、株式や新興国などの配分比率を大きくする。逆に、安定的な収益を目的とするなら、債券の比率を高めるという具合だ。

 長期的に安定した資産運用を目指すには、分散投資が必要だが、小林氏によれば、分散の方法は時代とともに変わってきているという。従来の考え方は、株式や債券など〈投資対象の分散〉、米、欧、オセアニア、新興国といった〈地域の分散〉、積み立て投資などを利用する〈投資タイミングの分散〉の三つを図ることとされていた。

 ところが、このところの金融危機では株式も債券も、ほぼ一様に価格を下げているため、従来型に加えて、新たな分散手法が求められている。その一つが、〈投資対象をさらに拡大〉することだ。

 「貴金属や農産品などのコモディティ、外貨、不動産などは、国内外の株式や債券といった伝統的な資産とは値動きが連動しないとされます。これらの資産を組み入れることで、より安定的な運用を期待できるのです」

 さらに、〈投資手法の分散〉も効果的だ。値上がりだけでなく、値下がり局面でも収益を期待できる株式信用取引やFX、CFD(差金決済取引)などを組み入れると、多様な局面で損益を補完することができる。

 「伝統的な資産とは異なる運用先や価格下落局面に収益チャンスを見出す投資手法は、比較的リスクが高いと考えられていますが、長期安定運用を目指すには、もはや不可欠な選択肢」と、小林氏は言う。