パレスチナ人はイスラム教徒が多く、東エルサレムを将来の独立国家の首都とする、という主張を続けている。エルサレムの帰属問題は、イスラエルとパレスチナの交渉の中核部分にあたるだけに、これまでの米政権と国際社会は、「エルサレムの地位は、イスラエルとパレスチナの和平交渉で決めるべきだ」として、両者の話し合いで決着すべきだとの立場を取ってきた。

トランプの支持基盤である
カジノ経営者と福音派の意見を尊重か

 それをトランプ大統領が、今、突然覆したのはなぜなのか。

 その経緯に詳しいのは、ニューヨーク・タイムズ紙のホワイトハウス担当で、外交記事に定評があるマーク・ランドラー記者の記事だ。

 ランドラー記者によると、トランプ大統領の今回の決断は、外交的な決断ではなく、自らの支持層にアピールするための「政治的な決断だ」という。背後にいたのは、米国内のトランプ大統領の支持基盤で、特に巨大カジノを経営しているシェルドン・アデルソン氏などの親イスラエル派や、福音派(エバンジェリカル)と呼ばれる宗教右派の人々だったという。

 トランプ大統領は今年1月、大統領就任の10日前に、ニューヨークのトランプタワーで、アデルソン氏と面会。アデルソン氏はその場で、米大使館をテルアビブからエルサレムに移すことが重要な優先項目であることを伝えられていたという。アデルソン氏は、大統領選中にトランプ陣営側に多額の資金援助を行っていた人物だ。

 ところが今年6月、トランプ大統領が大使館移転の延期に署名した際に、娘婿で上級アドバイザーのジャレッド・クシュナー氏が、トランプ政権と中東諸国との信頼関係ができるまでは、大使館移転を打ち出すべきではないと意見していたという。

 これに対し、アデルソン氏らはいらだちを強めた。アデルソン氏は10月に、トランプ大統領やクシュナー氏とホワイトハウスで会食し、大使館移転を働きかけていたという。

 そして、「延期」署名の期限を12月初めに控えた11月27日、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の会合で、大使館移転問題をどう扱うかが話し合われた。その席でトランプ大統領は、「より創造的な解決策」を求めたという。

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国際政治とは無関係、政治的な理由で決定

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