トランプ米大統領は、エルサレムをイスラエルの首都として公式に認めた。この「自分ファースト」な決定は日本の中東ビジネスまでも破壊しかねない Photo:REUTERS/AFLO

中東和平交渉を危機に追いやる
トランプの「自分ファースト」宣言

 お得意のちゃぶ台返しも、ここまで来るとやり過ぎである。トランプ大統領(以下、トランプ氏)は、エルサレムをイスラエルの首都として公式に認め、米国大使館を現在の商都テルアビブからエルサレムに「可能な限り速やかに」移転する手続きを始めるよう、国務省に指示した。

 イスラム圏や欧米の猛反対を押し切っての決断は、国際世論の四面楚歌を受けて孤立無援であるが、トランプ氏は意に介することなく、わが道を行く様子で、米国内の支持基盤へのアピールが浸透すれば、それでよしとする魂胆である。

 中東情勢は日本人にとって遠い問題に感じられるだろうが、国際社会にとって今回の「事件」の意味は大きい。

 とりわけ、米国がイスラエルとパレスチナの和平交渉の仲介役を買って出て、「エルサレムの地位は和平交渉の中で定める」という方針で合意した1993年のオスロ合意は、国際社会も認めた暗黙知だった。この度のトランプ氏の独断は、中断していたとはいえ、ただでさえ不安定な中東全域をさらに不安定化させ、これまでの和平プロセスを頓挫・破壊へと追いやる可能性がある。

 さらに中東政策での失政は、米国にとって国際紛争の仲介役としての資格をも自ら失っていくリスクがある。親米のアラブ諸国をはじめ、米国の外交政策に対する国際社会の信認を弱め、協調や支援を取り付け難くなりかねず、米国外交の孤立化を招く恐れがある。

 それは、中東でのビジネスに力を入れる中、米国と親密な外交・安全保障関係を築いていると見なされる日本にも、負の影響を及ぼしそうである。

 トランプ氏の宣言が出た12月6日以降、パレスチナ自治区では住民による激しい抗議行動が続発。かつてのインティファーダ(民衆蜂起)に発展しかねない状況だ。ガザ地区ではイスラエル軍との衝突や同軍の空爆などでパレスチナ人4人が死亡。パレスチナの赤新月社(赤十字)によると、パレスチナ各地での負傷者は9日までに1000人を超えている。混乱はテロリストたちにも格好の「付け入る口実」を与えかねない。復活を狙うIS(イスラム国)の残党たちが勢力を拡大する恐れもある。そんな事態を招けば、イスラエルにとっても利益を損ねることは必至である。