側近たちが用意したのは、二つの選択肢だった。一つは「移転延期に再び署名する」こと、もう一つは「移転延期に署名するものの、エルサレムをイスラエルの首都として承認し、大使館移転に向けた動きを始める」ことだったという。

国際政治とは無関係
あらゆる政治的な理由で決定

 トランプ大統領が選んだのは後者であり、その中身は側近たちのアイデアよりもさらに踏み込んだものだった。移転延期には署名する一方で、エルサレムの首都承認を行うと同時に、「大使館移転を行うことを、側近たちの素案以上に、よりはっきりと明言する」という決断をしたのだ。

 ランドラー記者は、NYTのポッドキャストの中で、こう指摘した。「トランプ大統領は、(今回の決断で)二つの非常に具体的かつ重要な支持基盤にアピールしていた。一つは福音派、もう一つは親イスラエル派だった。トランプ氏は、この二つのグループに(大使館移転を)約束していたのだ。彼らは大統領選で非常に大きな貢献をしていた。だから、(今回の決断には)あらゆる政治的な理由が存在していたのであり、それらは国際政治とはほとんど無関係のものだったのだ」

 トランプ大統領の決断について、ティラーソン国務長官もマティス国防長官も、水面下では反対していたという。イスラム諸国の反感が高まることで、米外交官や、海外にいる米兵たちを、危険にさらすというのが理由だったようだ。

 主要閣僚が反対する中でのトランプ大統領の決断は、米国民のための「米国第一主義(アメリカファースト)」というよりも、自らの限られた政治基盤のための「自分ファースト」の判断だったといってよいだろう。

 今回、トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認めただけで、「エルサレムの分割がありうるのか」「パレスチナとの間の交渉がどうなるのか」などはイスラエルとパレスチナの間の和平交渉に委ねる考えを示した。だからこそ、まだ交渉の余地は十分残されているという指摘もある。

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日本政府は北の問題があっても"諫言"すべき

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