また、役割を持てば当然、当事者意識が高まる。これだけ働いたという自負も生まれ、成果をほめてもらいたいという欲求も生じる。ほめられることが、承認につながる。避難所で見かけた「キラキラした人間関係」は、厳しい環境制約下でも、従来と発想を変えることで、新しい暮らしを実現しうるヒントに満ちていたのだ。

アジア地域に資する
東北漁山村街づくり

「たとえば子どもたちと遊び感覚で節電することだけでも、消費電力が1割減る。家族が集まって団らんすることでさらに2割減る。もっと工夫を加えていけば3割減るかもしれない。震災後は原子力発電の見直しや自然エネルギーへの転換にばかり目が行きましたが、もうちょっと違う見方をすれば、震災前の半分のエネルギー消費で、皆でワイワイガヤガヤ楽しくやっていけるのではないでしょうか」

 石田教授らは、今回の震災で大きな打撃を受けた東北沿岸エリアの地の利を生かし、一次・二次・三次産業複合体が小さなコミュニティのなかで成立する、新しい街づくりを進めようと計画している。

 そこでは若者や働き盛りの男女だけでなく、子どもたちやお年寄りにもしっかりと役割があり、死ぬまで元気に働き、自然と対峙せずその恩恵を楽しみ、祭りや仕事で絆を深めるのだという。

 そこで生まれた商材は近くのコミュニティで消費され、街は都会から“理想郷”と憧れを集める。住人は生きることや街に誇りを持ち、無理をしない自給自足型のエネルギー資源システムで、エネルギー消費は震災前の50%でも大丈夫になる(ちなみに現在の東北電力の発電量は震災前の59%である1279万キロワット〈11年12月〉)。

「こうした街づくりは、今後成長するアジア開発途上国の見本となり、日本が世界から尊敬されることで、さらにエネルギーや資源の供給が確保されることにもつながっていきます」

 小さな街で完結するかに見える一つの循環型社会は、地球全体が循環型となるための、重要なパーツとなる。震災復興をバネに東北で花開くであろう、新たな街づくりに期待したい。