顧客データは参画企業の財産に
逆転の発想でEC業界にインパクト

 EC(Eコマース)の窓口としては「LINEショッピング」が2017年6月にスタートしている。商品を絞り込んでいくディレクトリ型の構造で、買い物をしたユーザーには、LINEスタンプ購入などに利用できるLINEポイントが還元される。17年9月の時点で自前のECサイトを持つ企業が対象で、企業は販売金額からLINEにマージンを支払う。

 ディレクトリ型の構造とした理由について、LINE BizセンターO2O事業室ECサービスチーム・藤原彰二氏は「ユーザーが商品を探しやすい窓口を作りたいという思いがありました。一方で、自社ECサイトを持つ企業にも、検索結果に連動するSEOやリスティングでは既存の顧客にしかアプローチできないという悩みがある。それらを踏まえたうえで、今のモデルに落ち着きました」と語る。

 多くの企業から出店を集める理由のひとつに、参画する企業が顧客データを財産として所有できるメリットがある。一般的なショッピングモールは通常、そこで獲得した新規ユーザーにメール配信をしても、その出店先のショッピングモール以外のリンクをつけられない。

 メルマガなどで顧客にアプローチしようと思っても、モールを経由する必要がある。これに対して、LINEショッピングであれば、顧客データは自社の財産となり、アプローチの自由度は高まる。顧客データを持ちたい企業のニーズに応えたことで、EC業界にインパクトをもたらしているという。

 LINEショッピングによる顧客誘導施策も奏功している。LINEショッピングがスタートする際に行われた「アパレル15%ポイントバック」や、17年8月に実施した大型キャンペーンでは、参画する企業に新規顧客の獲得や売上増大をもたらしたという。

 現在、ポイントの付与がエンドユーザーを繋ぎとめる仕掛けとなっているが、「価格をはじめユーザーのニーズに企業が応える場にしたいと思っています。リアル店舗の取り込みも想定しています。買い物のコミュニケーションのインフラとして情報がすべてある、欲しい情報にすぐにたどりつける、そんな存在を目指しています」(前出・藤原氏)。

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