毎月のアウトプット検討会に社長・副社長が出席

 HIT法を軌道に乗せるため、加藤社長・辻井副社長は自らも積極的に活動に参加した。毎月1回、活動の進捗状況を報告するために開かれる「アウトプット検討会」に、なるべく2人同時に出席することにしたのだ。

「それまでも八千代工業では新しい取り組みには挑戦したことはありましたが、続かなかったという過去があります。今回も“そのうち終わるだろう”という雰囲気が感じられました。そんな後ろ向きなムードを払拭するためにも、社長と私の2人で発破を掛けることが大事だったのです」(辻井副社長)

 検討会のなかでは、HIT法のツールがどのように使われているのか、どんな改善案が出てきたのか、などの発表がリーダーを中心に行われる。それを加藤社長・辻井副社長だけでなく、システム科学の石橋社長も聞き、コメントを言う。厳しい言葉で叱責するシーンもあり、これが現場のプレッシャーになった。

 辻井副社長が手応えを感じたのは、マネジャーの発言が変わってきたことだった。「 “自分は今まで部下にこんなムダな仕事をやらせていたと初めて気が付いた”と、気づきの発言がマネジャーから聞かれるようになったのは、HIT法の効果が出てきた証拠だったと思います」

 本社の活動が1年過ぎた頃には、「総務と経理の業務を幅広くこなせる人材が必要」「こんな情報を共有し合おう」というように、部門の垣根を越えた部門長同士のコミュニケーションも活発に行われるようになった。HIT法が担当者から課長、部長、そして部門長のマインドまでも変えつつあることを、加藤社長たちは実感した。

HIT法は人材育成にも威力を発揮

 加藤社長らが改めてHIT法のメリットを感じたのは、基本活動を終え、専門活動に入った頃だ。専門活動では、スキルマトリクスなどを使った業務管理や人材育成が行われる。

「スキルマトリクスは、誰がどんな仕事ができるのか、経験者を育成しなければならないのはどの仕事なのか、といったことが一覧でき、人材育成計画の立案や実施に役立てることができます。また、Sチャートを作成した後に自動で作られる管理点マニュアルは、個々の社員の多機能化や新人の教育、業務の引き継ぎに活用できます。分析ツールによって、業務量の偏りや分担状況も明らかになり、最適な人員配置ができるようになりました。HIT法は使い方次第でさらに大きな効果を生むツールだと思いました」(加藤社長)

「生産部門にはスキルマトリクスのような仕組みはありましたが、間接部門にはありませんでした。マネジャーが経験と勘に頼って人材の育成や配置を行っていたのが実態です。HIT法によって、明確な意志と計画を持って人材育成ができるようになりました」(辻井副社長)